ギャンブル依存症克服はストーリーを読んで!

ギャンブル依存症を題材にした小説はいろいろと有りますが、ここでは読むだけでギャンブル依存症を克服し、防止までしちゃおうって寸法です。 きっとあなたのお役に立てると思います、是非お読み下さいね!

朝の告白 その26

その日の朝、リザの体調はまだ優れなかった。彼女は朝からスープを一口飲んだだけで、相変わらずベッドに横になったままだった。私は彼女の枕元に座り、話しかけた。
「リザ、具合はどうだね?」
リザは弱々しく頷くと言った。
「随分とましになったわ。心配しないで。あなたはどう? ちゃんと休めたのかしら?」
私は言った。
「ああ、ありがとう! 私のことなら大丈夫だ、それよりも自分のことを気遣ってくれ。それと、さっきドゥエルと会ってきた。手紙に書いたとおりこの農場のこれからについて全て話してきたんだ……」
リザが尋ねた。
「それで、どうだったの?」
私は答えた。
「了解してくれたよ。彼も思うところが有ったんだろう、涙まで流して感謝してくれた」 
リザが言った。
「私、故郷に帰ったらあの子達を一生懸命育てるわ。そして子育てがすんだら、またここに戻ってこようと思っているの……。それまでは、ドゥエルに農場を任せるつもりよ。でも必ず大切にするわ。あなたから貰ったかけがえのない宝ですもの……」
私は言った。
「そうしてくれると有り難い。私も安心だ。今の私にとって、この農場を維持することは不可能だ。そうすれば手紙にも書いたとおり、文字通り全てが失せることになってしまう。リザ……、私にとって賭博とは、そういったものだったんだよ」
こうしてリザにそれまでのことを話していくうちに、私は自らの心の中に一筋の希望とも思えるものを感じるようになっていった。それは、具体的なものではなく、ほのかな、そして淡いものだったが、今までに感じたことの無い不思議な感覚だった。私は全ての物を失ったが、あの時初めて希望というものに出会えたのかもしれないのだ。
身の回りを全て召使に任せ、毎晩好みの料理を食べる。小作人たちから敬われ、美しい妻と可愛い子供たちに囲まれて、好きなときに客人を招待して宴を催す――。
私はそんな何不自由無い生活を、それまでずっと続けてきた。だが考えてみれば、希望と名の付く物に出会うことは決して無かったのだ。
私はリザに言った。
「私はもはや、ここでお前たちと一緒にまともに暮らしていくことができない人間にまで、なり下がってしまった。金が有れば有るだけ、そして金に換えることができる物があれば、それらをとことん失ってしまわないと気が済まない、そんな人間になってしまったんだ!」
「だから、お前たちと一緒にここに居れば、必ず全ての物を失い尽す。そして皆を不幸にすることだろう。だからこそリザ! 私とアーニャは失う物を持たないことにしたんだよ……」
 リザの頬を伝って、涙がこぼれ落ちた。私は話し続けた。
「これからアーニャと一緒に暮らすことを許してくれ。私にはあの女を見殺しにすることなど、到底できない……」
力なくリザが尋ねた。
「これからどうやって暮らしていくつもりなの?」
私は答えた。
「全く何も持たず、この農場に居る農夫たちのように汗を流して、一から出直すつもりだ。それ以外に、私たちに残された方法は無いのさ」
その時リザが顔色を変え、叫んだ。
「あなた、せめて自分たちが生活するだけの畑をお持ちになって! そうしないと暮らしていけなくなるわ。死んでしまったら元も子もないじゃない!」
私はリザの目を見つめた。あの時改めて感じたが、実に優しく澄んだ眼差しだった。私はそれまで彼女と一緒に暮らしてきても、全く気付かなかったのさ。あの時、私はこう思ったんだ。
 ――自分は今、リザに彼女以外の女性とここを出て行くと告げに来ているのだ。それにもかかわらず、リザは私のことを思いやりここまで心配してくれている――。そう! 気付かなかった。本当に今まで気付きはしなかったのだ。でも、今はわかるような気がする。 私は今正に目覚めようとしているのかもしれない!――と。
だが、全て遅すぎた。戻ることなどできなかったのだ……。
私はリザの目を見つめながら言った。
「リザ……。私はたった今まで気付かなかった。いや!気付いていると、思い過ごしてきたのかもしれない。でも今はよくわかるんだ。人生で一番大切なものが一体何か……」
「いつの日も一緒に暮らし続けてきたお前の優しさが、そして思いやりが。そう! 私は、こんな大切な物がすぐ身近にあったことに、今まで全く気付かなかったんだ!」
 そこまで話すと、リザは嗚咽し始めた。私は彼女の手を握り締めながら語り続けた。
「でも、自分の農地を持って耕すことはやめておくよ。今私たちに何が与えられようとも、すぐに全て失ってしまうことになるだろうからね。そして、この禊こそが今の私にできる唯一のことなんだ……」
この時私は既に知っていたのだ。賭博というものに取り付かれた者が辿る運命とは、どういったものなのか。そしてその魔性ともいえる魅力に一度なりとも捕われれば、何人も堕落し破滅するということを。

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朝の告白 その27

リザの部屋を出ると、居間の方から重々しいピアノの音が聞こえてきた。私が部屋に入ると、ミーシャがその小さな体を大きく動かし、ベートーベンの『悲愴』を演奏していた。
――少し見ないうちに、上手になったものだ!――
そう感じて私は窓際のソファにもたれ、しばしの間彼女の演奏を聴き入った。その時、ミーシャの鍵盤を叩く手が止まった。彼女は私の姿に気がつくと、すぐさま椅子から飛び降りて私に駆け寄った。そしてその小さな目には、みるみる涙の粒が溜まり始めた。彼女は、震えた声で言った。
「おとうさま! どこに行ってらしたの! あんまり長い間お帰りにならないから……、わたしもおかあさまだって、本当にしんぱいしてたの!」
ミーシャはそう言って、私に抱きつき頬を寄せて甘えた。私は我が娘を抱きしめた。
「心配したのかい? 少し仕事が長引いただけだからね。それとミーシャ、しばらく見ないうちに上手になったじゃないか! もう一度聞かせてくれないか?」
彼女は再びピアノを弾き始めた。私はその悲痛なソナタの調べを聴きながら考えていた。
――この子も、来週にはリザと共に、彼女の故郷であるエルブルス山の麓まで行くことになるのだ。この子には、何と話したら良いものか……。それに、アレクセイは乳飲み子だ。今、リザは体調を崩している。これも、どうしたものだろう?――と。
子供たちと別れることは、身を切るよりも辛いことだった。しかし、選択は許されなかった。私が犯した罪とは、それほどまでに重いものだったからだ。
それから私は、次男のアレクセイに会う為にマリアの元を訪れた。まもなく一歳になるアレクセイは、乳母のマリアが面倒をみることになっていた。半年振りに見る我が子は、驚くほど大きく成長していた。マリアは私の顔を見ると、微笑んだ。
「旦那様、お帰りなさいませ。お坊ちゃんは、ほれ、この通り随分と大きくなられました。最近はミルクの量も多くなって、そりゃ元気にお育ちですよ!」
私は久しぶりに我が子を抱くと、その顔を覗き込んだ。亜麻色の髪と茶色の瞳はリザそっくりだったよ。目もしっかり見えるようだった。その小さな目で私の姿を懸命に追いかける姿は、実に可愛らしいものだった。そうして我が子を抱いていると、ドゥエルがやってきて言った。
「旦那様、奥様がお呼びでございます」
私がリザの部屋に行くと、彼女はもうベッドから起き上がり背もたれに体をあずけていた。私は言った。
「少しはましになったようだね」
彼女が言った。
「ええ、あれからかなり調子が良くなったのよ。お医者様も随分と良くなったって……」
「それは良い! 私もほっとしたよ」
リザは快復しているようだった。その様子を見て、私も少しは気が楽になった。リザが体調を崩したのは、すべて私の責任だったからね……。 
リザが言った。
「あなたに一つお願いがあるのよ! 私、ドゥエルとアーニャとの赤ちゃんを、引き取ろうと思っているの」
私は驚いた。そして驚きつつも、自分が置き去りにしたまま忘れ去っていた大切なことに気付き愕然とした。確かにドゥエルにああ言ったものの、私はドゥエルの子供のことまで考えていなかったのだ。
リザは話し続けた。
「そもそもこうなったのも、何か縁が有ったのよ。きっと神様の思し召しなんだわ。私、あの子を引き取って大切に育てるわ。だって母親が居ないんですもの、可愛そうだわ」
確かにそうだった、ドゥエルの息子はまだ乳飲み子だったが、生まれてすぐアーニャが家を出た為に名前さえ決まっていなかったからね。
――こうして皮肉なことに、私が居なくなったものの、彼女の家族として一人の男の子が加わることとなった。そしてドゥエルの息子は、彼女によりミハエルと名づけられた――

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朝の告白 その28

老人がそこまで話し終えると、アレクセイが声をあげた。彼は手をぶるぶると震わせ、魘されたように言った。
「ああ! そういうことだったのですね。私は知らなかった……。今日という今日まで知らなかった……」
そして、彼は老人の顔をじっとみつめた。アレクセイの両目に涙が溢れた。
「何と言うことだ! あなたは……、あなたは……」
老人が答えた。
「そうさ、君の本当の父親は、この私だったんだよ。」
老人は続けた。
「でも、今ではそれも昔の話さ。ドゥエル・ビルヴァンスキーこそがお前の父であり、もう亡くなって久しいが、リザがお前の母親だ」
「お前とミハエルは、双子の兄弟としてリザに育てられた。そして二人とも立派に育ってくれた……。私にとって、これほど嬉しいことは無い」
「私も、そして事実を知る者は全て、このことを隠し続けてきた。特にミーシャには幼い頃から、お前たちに決して話さぬよう言い続けてきた。あの子には、本当に可哀想なことをしたもんだ……」
アレクセイは驚いた。
「お姉さまも、ご存知だったのですか?」
老人が答えた。
「ミハエルがアーニャの子だというのは、あの時のミーシャには隠すことができないことだった。あの子はもう八歳になっていたからね……」
老人が言った。
「私たちは今まで、これら事実を君たち兄弟に隠し通してきた。許してくれ。でもそれが一番良い方法だと思い、全てを秘密にしてきたのさ……。でも、君たちは皆立派に育ってくれた。だから今こそ、全てを話すべき時と考えて今日はやって来たんだ」
「さて、そろそろ帰るとしよう! 牛に水をやらねばならないからね」
老人はそう言うと、テーブルに手をかけ立ち上がった。
「アレクセイ、有難う! 私は今日、君に会えて嬉しかったよ。そしてもうこれで思い残すことは何も無い……。私の話はこれで終わりだ。長い間、時間を取らせてしまったね」
老人はそう言うと、嬉しそうに微笑んだ。その時、アレクセイが立ち上がった老人の前に駆け寄り、老人の手を取った。アレクセイは悲痛な面持ちで、祈るように叫んだ。
「お聞かせいただけませんか……。あなたがその後、どうされていたのか」
「そうかね? しかし、その後の私のことなど聞いて何になる? それからの私は一人の農夫として、一頭の馬を頼りに夫婦共々ありふれた人生を歩んできただけのことだ」
そこまで話すと老人は、ふと思いついたように言った。
「もっとも、そうなるまでにあったいきさつは、君に話しておいても構わないだろう」
アレクセイは老人にウオッカを勧め、召使にお茶を入れるよう命じた。老人は再び椅子に座ると語り始めた。
――そしていよいよリザとお前たち兄弟が、リザの故郷へと旅立つ日となった。お前とミハエルはマリアに連れられ、籠の中ですやすやと眠っていた――
私はリザに別れの挨拶をした。
「リザ……、元気でいてくれ。申し訳ないが、今日からはお前一人がこの子たちの親だ。子供たちのことをよろしく頼んだよ。どうか私を許しておくれ。さようなら。どうか末永く元気で……」
リザは優しく微笑んだ。
「あなたも元気でいてね。それと……、私はあなたの手紙を受け取った時から、もうあなたのことを恨んではいないわ。これも人生の悪戯だったのよ」 
それから私は馬車の中に手を伸ばした。そしてミーシャの手を握り締め、言った。
「ミーシャ、お前も元気でな。またここに遊びにおいで」
ミーシャは目に涙をためたまま、小さく頷いた。
「おとうさま……、元気でいらして……」
私はミーシャを抱きしめた。罪悪感と後悔、そして例えようも無い喪失感が私を襲った。私は、あの時のミーシャの姿を一生忘れはしないだろう。ぶ厚いコートを着込んで、小さなお気に入りの帽子を頭に載せていた―― 馬車に乗り込む姿は、さながら小熊のようで例えようも無く愛らしかったものさ。
こうして私は、いちばん大切にしていたものを全て失ってしまった。私たちが見えなくなるまで、ミーシャは馬車の窓から手を振り続けた。やがて馬車は雪に覆われた大地へ、吸い込まれていくように見えなくなった。

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朝の告白 その29

私には、まだ一つの仕事が残されていた。それは、あの夜の賭けに負けた代償として、御者のヴィロンスキーに一エーカーの麦畑をくれてやることだった。私はアーニャの部屋を訪れると、彼女に言った。
「アーニャ、私はこれから出かける。しばらくの間、待っていてくれないか?」
アーニャが尋ねた。
「あなた、一体今からどこまで行くの? もうじき日が暮れるじゃないの?」
私は言った。
「もう一つ、私にはしなければならない仕事が残っているんだよ。御者のヴィロンスキーの所へ行かねばならないんだ」
アーニャが叫んだ。
「あたいを連れ戻せなかったから、あの御者に麦畑をくれてやる。そういうことなのね?」
「その通りだ、私は約束を守らねばならない……」
次にアーニャが言った言葉を聞いて、私は驚いた。意外なことを彼女が言い出したからだ。アーニャは私の目を覗き込むように見つめて、こう言った。
「あたいも一緒に行っていい?」
私はアーニャに言った。
「アーニャ、もうこうなってしまった限りは、どうにもならないことなんだよ。潔くないことをすれば、一生の恥をかくことになる。それに、あいつだってただでは済まさないだろう」
アーニャは笑い飛ばした。
「勿論、そんなことは承知の上さ! あたいは、あなたが一体どんな男とそんな賭けをしたのか、その相手の顔を一目拝んでみたいだけ。ただ、それだけなのさ!」
こうして私とアーニャは、ヴィロンスキーの元へと向かった。彼の家に着き扉をノックすると、初老の男が我々を出迎えた。
「私はイワン・オフロフスキーだ。主のヴィロンスキーに用が有ってやって来た。取り次いで貰えないだろうか?」
「あいにく親方は今、馬屋に行っておいでです。さしつかえなければ、ご案内させていただきますが」
「よろしく頼むよ、悪いが案内してくれないか?」
男は馬屋まで我々を案内した。馬屋の中は冬だというのに生暖かく、何頭もの馬が繋がれて白い息を吐きながら飼葉を食んでいた。彼は入り口から一歩進み、大声で叫んだ。
「親方さま! 客人がお見えです!」
程なく、ヴィロンスキーが現れた。彼は太った体を揺すりながら我々の前に歩み寄ると言った。
「旦那、手紙は確かに読ませていただきましたぜ。気の毒なこった! でも、悪く思わねぇでくだせぇやしよ。そもそもこの賭けは旦那から言い出したんだから……」
ヴィロンスキーはこう言うと、アーニャの方をちらりと見た。彼は笑いながら言った。
「これはまた、上等な別嬪さんじゃありませんか。それもお若い! これじゃあ無理もねえ」
私は言った。
「ヴィロンスキーよ、あんたに渡す麦畑はドゥエルに言って用意させてあるから、春になってから好きに処分するがいい」
御者は言った。
「旦那、それはどうもありがとうごぜぇます。まあ、あっしはそもそも馬家主だから、戴いたものの、これからどうしたもんか。でも、ありがたく頂戴いたしますよ!」
御者は上機嫌に話し続けた。
「旦那、だからあの時にあっしは言ったんだ。旦那はこの女を連れて帰れる人じゃねぇってね。バクチに狂っている女を連れ戻す方法なんざ、本当はわけないことなんでさ!」 
 ヴィロンスキーはアーニャの方をちらりと見ると、一息ついて喋り続けた。
「旦那、やり方を間違っちゃいけねえ。横面を二回三回張り飛ばし、無理やりでも引きずって来ねえと、こんな女がいうことを聞くわけがねぇ!」
私は御者の言う言葉を聞き続けた。御者はますます息を荒くして、得意げに喋り続けた。
「旦那にそんなことができるわけがねぇ! そもそも女に優しいというか、甘すぎたってことさ!」
御者は、得意げな顔でそう言うと声を上げて笑った。そして、次に少し真面目な顔をしてこう呟いた。
「あっしだって実のところ、昔バクチでえらい目に遭ったことがある。だから今は一切やらねぇし、勿論やることだって許さねぇ! 旦那も、少しはおわかりになってでしょう! どうにも怖いもんです、バクチってもんはね……」
それまで私は知らなかった。あの男も、かつては賭博者だったのだ。
その時突然、アーニャが私の横から一歩進み出て、御者の前に立った。彼女は、御者に向かって話し始めた。
「ヴィロンスキーさん、あなたの言うとおりだわ。この人は優しい人よ。だからあたいを連れ戻すことができなかった……」
「だからあなたとの賭けに負けた。そのとおりよ。それと……、今日あたいが何の為にここへ一緒に付いて来たのか、あなたはおわかり?」
ヴィロンスキーは大笑いして言った。
「どうせ、こんな大それた勝負をした相手をひと目見ておきたかった、ってことなんでしょう! あんたは実に面白い女だ!」
アーニャが言った。
「そう! その通りよ、図星だわ。それともう一つ目的があるの……」
「もう一つ……?」
ヴィロンスキーは不思議そうな顔をした。アーニャは、笑いながら言った。
「馬を一頭貰うわ。約束どおり」

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朝の告白 その30

私は驚いた。でも次の瞬間、私は彼女の言った言葉の意味が全て理解できた。
――そうだ!私はこのことをすっかりと忘れ去っていた。アーニャは、このことを覚えていて私に付いて来たのだ――
ヴィロンスキーはわけがわからないといった表情で、両掌を上に向けて言った。
「馬? それは一体、何のこって……?」
アーニャが勝ち誇ったように言った。
「あんたはあの日この人に、私が二度とバクチに手を出さないというのなら、一番気に入った馬を一頭やると言ったはずよ!」
「あたいは、二度とバクチをしない。今、あんたの前で誓うわ、この命にかけて」
次の瞬間、ヴィロンスキーは目を大きく見開き、体を揺すった。彼は大きく笑った。そして一歩前に出ると、アーニャの手を握りこう言った。
「違ぇねぇ! 確かにそうだった。違ぇねぇ! お嬢さん……、いや奥さん! その通りだ。さあ! 今から一頭どうぞ選んでくださいまし!」 
「旦那! この賭けは、結局ワケだったってことだ! それにしても……、あんたは見上げた女だよ!」
ヴィロンスキーはそう言って、大きな口を開け笑った。そして嬉しそうに、アーニャの顔を見て言った。
「あんたがバクチを繰り返すわけがねぇ! あっしにはわかるんだ……。もうバクチをする者の顔じゃねぇ……」
「旦那、さあ、馬を選んで下せぇまし! どの馬だってかまわねぇ!」
ヴィロンスキーはそう言うと、私たちを馬屋の中に招き入れた。私が馬を物色し始めると、アーニャがそれを遮った。
「あなた、馬を見るのならあたいの方が上手よ!」
アーニャはそう言うと、馬屋に繋がれた馬を一頭一頭眺めて回った。そして、頭にブチのある白馬の前で歩みを止めた。
「この子にするわ! さあ、あんたよ! あたいと一緒においで」
アーニャはそう言うと閂を外し、その馬の手綱を引いた。ヴィロンスキーが驚いた顔で言った。
「こりゃ驚いた! 旦那! あなたが選んだ女はバクチも達者だったろうが、何の。馬を見るのも、男を見るのもかなりお上手だ」
「さあ! 連れて行っておくんなせぇ! お二人に幸運が訪れますように。」
御者はそう言うと被っていた帽子を取り、それを胸にあて一礼した。私は歩み寄り、御者と肩を抱き合った。
「ありがとう! あんたも達者でな……」 

――こうして、我々は一頭の馬を得た。そしてその馬をワイツと名づけた――

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