ギャンブル依存症克服はストーリーを読んで!

ギャンブル依存症を題材にした小説はいろいろと有りますが、ここでは読むだけでギャンブル依存症を克服し、防止までしちゃおうって寸法です。 きっとあなたのお役に立てると思います、是非お読み下さいね!

ランキング、お休みします<(_ _)>

こんばんは。

いつもご訪問いただき、どうもありがとうございます。

ブログを更新している時間と心の余裕がなくなりました・・・。

少年たちと神しばらくブログランキングをお休みし、更新を不規則にさせていただきます。

これまでからもランキングに参加する以上、更新は毎日かそれに近い頻度でするべきだと思っていました。

しかしながらここまで不規則になると、それ以前の問題だと思います。 こういった状態でランキングに参加しているのは、他のブロガーさんたちに大変失礼だと感じました・・・。

ここは潔く、ランキング撤退をさせていただこうと思います。 本当は砂上の街第二部完結後にそうしたかったのですが、力尽きました・・・。

今まで応援してくださったあなたには、これまでのご声援・応援に対し心よりお礼申し上げます。 温かく見守っていただき、本当にありがとうございました。 

また復帰するかもしれません。 でもその時にはきちんと更新し、恥ずかしくない姿でお目にかかれるようにしたいと思います。

繰り返し訪問いただいたあなたにお礼申し上げます。 どうもありがとうございました。

幸いながらこのカテゴリーの参加者さんたちは素晴らしい方ばかりで、いつも役に立つ記事を提供してくださっています。

いつか笑えるよね・・・なつきさんの暖かブログ

帰ってきたブラックジョーク・・・ブラックジョークさんのド根性ブログ

禁ギャンブルセラピー・・・Tomoさんの癒しブログ


皆さんは自らの依存に悩みながらも、いつも素晴らしい記事を提供してくださいます。 頭が下がります・・・。

そして依存者家族の「のりかさん」・・・。

ノリカのズタボロ日記

のりかさんのブログに励まされた方は、どれほど多いことでしょうか!

数少ない依存者家族のブログとして、本当に感謝しきれない気持で一杯です。

どうも今までありがとうございました。


不規則更新ですが、ブログは今までどおり続けさせていただきます。

また気まぐれに訪問いただければ幸いです。

今回は勝手な都合によりご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした。

これからもどうぞ、よろしくお願いいたします。

タカビー


PS

復帰する際は、ささやかですがプレゼントを用意させていただきます。

ご案内いたしますので、どうぞ気軽においでくださいね!

砂上の街第二部 第67話 離散その2

しかしその時私は違和感を感じたのだ。 “いつもの父と違う・・・” 直感的にそう感じたのである。 父は何気無く新聞に目を落としてはいたが、目の焦点が定まっていなかった・・・。


それにまず普段の父であるならば、私がそういった話をしたとき、いろいろなことをさりげなく聞きだそうとしただろう。 でもあの日の父は、違っていた。 それきり黙りこんでしまったのだ・・・。

「遺産の件は片付いたのか?」

私は父からのそういった質問を予想していた。 だから、その時に入籍の話もあわせて打診しようと思っていた。 というよりもそれまでに父の側から、当然その話が出るものと予想していたのだ。 


胸騒ぎがした。 だが私は疑惑を胸にその場を立ち去った。 悪い予感が現実にならないことを祈りながら、自分の部屋に戻った。 どう考えてもあの日の父は不自然すぎたのである。 私が部屋を出るまで平静を装っていたが、あの人は少々のことで正体を見破られるような人ではない。 私はその件についても辻井弁護士に尋ねようと心に決めていた・・・。


翌日父は家に帰ると、すぐ私に1通の封書を手渡した。 東京銀行と書かれた封筒である。

「繭子・・・。 これ、渡しておくよ。 何かまた要るときは言いなさい。」

父はそう言うと、いつものように2階に上がっていった。 私がその封書を開けると、中に私名義の証書のコピーが2枚入っていた。 よく考えてみたら、銀行の印鑑も父に預けてあったのだ。 

“やろうと思えば、何でもできる・・・。”

その時私はそう考えながら、母の言葉を思い出していた。 

362412599_9e7dfd1eed_m「大切にしなさい。 お金は命の次に大事なものよ。 それと・・・、このお金の存在は誰にも喋るんじゃないわよ。」

「通帳と印鑑は絶対に一緒にしちゃいけない。 印鑑はあなたが持ち歩けばいいわ。 あとは好きにして! あなたのお金なんだから・・・。」

母はあの時、病院のベッドの上で私にそう言った。 私はうかつだったと反省し唇を噛みしめた・・・。 


 ◇


翌日、私は辻井弁護士の事務所を訪れた。 不安だった私は、事務所に着くとすぐにその話を切り出した。

「辻井さん・・・。 先にどうしても気になることがあるんです。 そのことから先にお話させていただいて、よろしいでしょうか?」


「何かあったんですか?」


「それが・・・、私の定期預金のことなんです。 証書と印鑑は父に頼んで銀行の貸し金庫に保管してもらっているんですけど・・・。」

「今回コピーを用意する為に父に持って帰ることを頼んだのですが、どうも父の態度がおかしくって・・・。」


「うーん、おかしいとは具体的に何かあったのですか?」


「どうも父はそのあたりの話を、避けているように感じます。 父は何か大切なことが有ると、必ず自分で確かめないと気がすまない人なんです。」

「それが今回は何も訊ねてこないですし・・・。 それに、そもそも父との同居話は父から言い出したことです。」


辻井弁護士は、そこまで聞くとゆっくりと話し始めた。

「どうにも怪しいが、あなたの立場としては問い詰めることもできない。 無理も無いことです・・・。 さりとて不安で仕方が無い。 といったところでしょう・・・。」


「はい、その通りです。」


「一つお聞きして良いですか? お父さまはギャンブルをされますか?」


「いいえ。 昔は競馬など少しはやっていたことも有りましたが、最近ではやらないと思います。」


「毎晩、ご帰宅は早いのでしょうか? 申し訳ないです、刑事のような聞き方になってしまって・・・。」


「いいえ、気になさらないでください・・・。 父が帰宅するのは早いです。 仕事を持ち帰っているようで・・・。」


「家でお仕事ですか・・・? お父さまは、どのような仕事をされているんです?」


「商社の丸井に勤めているんです。 今は営業部長だと聞きました・・・。」

そこまで話したところで、辻井弁護士は少し深刻な顔をして言った。

「一条さん・・・。」

「少し立ち入った話をしないといけないかもしれないです。 よろしいでしょうか・・・?」


「はい。 かまいません。」


「あなたは、お父さまが帰宅されてから何をされているのかご存知でしょうか? 何でもかまいません。 ちょっとしたことでもあれば、お話していただけないでしょうか?」


「そういえば・・・。 最近ちょくちょく、投資会社の社員という人から電話がかかってきますね。」


「どのような名称の会社でしょうか?」


「確か、丸庄物産とか聞きましたが・・・。」


「なるほど! それで、あなたはなぜその会社が投資会社だと知られたのです?」


「父の奥さんが、以前にそう言っていましたから。 それに・・・、」

私がそこまで話すると、辻井弁護士は真剣な眼差しになって私を見つめた。

「どうぞ、お続けください。」


「この間見たら、父の読んでいる新聞の下にそういった新聞が置かれてありました。」


「何という新聞でしたか?」


「はっきりと覚えてはいないんですけど、先物取引何とかって書いてあったと思います。」


私がそこまで話したところで、辻井弁護士は眉をひそめた。 そして哀れむような口調で、こう告げた。

「どうやら、あなたの予感は的中したようですね。 お気の毒ですが・・・。」


〜続く〜


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砂上の街第二部 第66話 離散

416557252_5d0d04cbdc_m人にものを頼むとき
一番高くつくのは 
身内なんだよ

そのことを知らないヤツが 
身を滅ぼすのさ・・・


TB



この家に来てから気になることがいくつかあった。 その中で一番不可解だったのが、家の中に存在する暗黙のルールである。 それは揉め事の原因を徹底的に排除する為に存在していた、といって良いだろう。 


父は一家に亀裂が入ってコントロールできなくなってしまう前に、それを未然に防ごうとしたのである。 つまりこの家では何か問題が起こると、父の了解無しでは全く物事が進まないようになっているのだ。 そのルールどおり、あず美さんは何かする前に必ず父に伺いを立てる。 


私は父の性格を知り尽くしている。  父は一家を支配する為に、こうした暗黙のルールを作ったのだ。 だが一見穏やかそうに見える家族も、心の中ではいつも何かを燻らせ続けてきたに違いなかった。 そして最初に沈黙を破ったのが亮太だったということなのだろう。 そういえば私の家の場合も、父と母が離婚する直前はそうだった。


あの頃父は母の外泊を咎めなかったし、できる限り、ことを荒立てようとはしなかった。 見てみないふりをするのが、彼の常套手段だった。 その代わり父は自分も好き勝手にやることを選び、互いに干渉しないことが暗黙のルールだった。 だが母は、そういった父の支配を拒んだのだ。 その結果、父は家を出た・・・。


あず美さんは一見父に従っているように見えるが、実はそうではない。 彼女にとって一番気がかりであり最優先すべきことは、亮太のことである。 そういった意味で、あの時父と彼女の利害関係は同じだったのである。


だが、その支配もそろそろ終りが近づいているように思われた。 亮太が帰ってこなくなった頃から、父とあず美さんの価値観が徐々に一致しなくなっていたからだ。 それにあわせて2人の間には溝が出来、どう考えてもそれは深まっていくばかりに思えた。 


そしてもう一つ、私がここに来てから疑問に感じていたことがある。 それは父の仕事のことだった。


父は大手商社の部長としてのキャリアを持っていた。 ヨーロッパ支局長という要職から離れ、本社の営業部長に納まっていると聞いていた。


その頃の父は会社から戻ると早々に食事を済ませ、書斎に閉じこもって何かしていることが多かった。  帰宅を早くして、会社から仕事を持って帰ってきているのだろうと私は感じていた。


ある日のこと、私はあず美さんのお手伝いで父の書斎を掃除していた。 そして見慣れないものが彼の机の上に置かれてあるのを発見した。 それはいつも置かれてある、日経新聞の下に畳んで置かれてあった。

“先物取引新報・・・”

その新聞にはそう書かれてあった。 以前学校で習ったことが有るが株式投資同様先物取引も投資の一種であり、失敗すれば多くのお金を失うこともあるということだった。


だがその時、私はそのことを気にも留めようとしなかった。 そのような取引がいかに恐ろしいものであるか、全く知らなかったのである。 そして信用取引というものが本人のみならず、家族までも奈落の底に突き落とすものだとは思いもしなかった。 父が持ち帰った仕事の一部だろうと、たいして気にもかけずに居たのだ。 


その頃から、家の電話にちょくちょく投資会社の担当者を名乗る男から電話がかかってくるようになった。 夜間、父が2階にある電話の子機を占領していることが、たびたび有った。


 ◇


大学生活の1年間は、実際あっと言う間だった。 ついこの間まで受験生だったと思っていたのに、ふと気が付いたら2回生になっていたというのがホンネである。


この間に私は2つのピアノコンテストにエントリーし、そのうちの一つは決勝まで進むことができた。 そこで入賞したことにより、フランスへの留学が約束された。


ちょうどその頃母の遺産相続の手続きが全て終わり、私の元へ辻井弁護士から連絡があった。

「一条さん、お久しぶりです。 娘から聞きましたよ! フランスへの留学を決められたそうじゃないですか! おめでとうございます。」

辻井弁護士は嬉しそうな声で喋り続けた。

「娘ともこの間話していたところだったんです。 一度ウチに招待しないといけないねって・・・。 有名人になってからでは、お呼びしにくいですから!」


「そんな・・・。 私、まだまだなんです。 いつもレッスン室で怒鳴られてばかりなんですよ!」

私はそう言って笑った。 次に辻井弁護士は少し声を潜めて話しかけた。

「ところで、話は変わりますが・・・。 そちらでは、うまく過ごされていますか?」


「ええ・・・。 何とか今のところ、上手くやっています。」


「そうですか。 どうでしょう? 近いうちにウチに来ることができませんか?」


「はい。 大丈夫です。」


「それでは、いつお見えになります?」


「明後日なら、だいたい時間の都合がつきます。」


「では、明後日の朝9時半にいらしてください。 あなたも二十歳になられました。 そろそろ、入籍についても考える時期が来ましたので・・・。」

「来られる時に、あなたがお持ちの預貯金額がわかるように通帳や定期預金の証書をコピーしてお持ちください。」

彼はそう言って電話を切った。 私は部屋に戻ると、保管している預貯金通帳を全て取り出して机の上に置いた。


母から遺産を引き継いだ時作った東京銀行の通帳が1冊、私が元々持っている郵便局の通帳が1冊、明治銀行の通帳が1冊・・・。 それら全てを取り出したときに、大切なことに気付いた。 それは父に預けてある定期預金証書のことである。


それは東京銀行で、3年定期と5年定期の2種類に分けて預金したものだった。 額面3000万円と2400万円、合計5400万円の預金である。 これらは額が大きいからと、父が取引銀行の貸し金庫で保管することになっていたのである。


その夜、私は父の書斎を訪れた。

「パパ・・・。 私の定期預金の証書、明日持って帰ってこれるかな?」

私は何気無く、父にそう言った。 一瞬沈黙した後、父は答えた。

「何に必要なんだい?」


「弁護士さんが、私の預貯金額を知りたいとおっしゃっているのよ。 定期預金の証書を、コピーしないといけないのよ・・・。」


「じゃ、わかった。 コピーでいいんだね? 明日、持って帰るようにしておくよ・・・。」


そうひとこと言うと、父はそれまでと同じように机の上の新聞を読み始めた。


〜続く〜


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砂上の街第二部 第65話 境遇その3

709419_sleepyAs you sow, you shall reap.

蒔いた種は刈り取らねばならぬ


ポール・エルマー・モア「ラフカディオ・ハーン論」より



>亮太さん、こんにちは。


>今深夜ですが、ようやく課題のレポートを書き終えました。 なぜ音楽科に日本国憲法の勉強なんて必要なのかしら? 嫌になっちゃう。

>亮太さんは法学部でしたね。 憲法なんて、お手のものなんでしょうね!


>さて、今日は何から書こうかしら・・・。

>そうそう! 亮太さんのバイトがパチンコって話・・・。 私はパチンコで勝って、そのお金で生活できるということが信じられないんです。

>だって、パチンコは賭け事だし大人の遊びでしょ? それに、聞く限りではみんな負けて帰ってくるらしいですし。

>どうすれば勝てるのか、繭子は見当もつかないんです・・・。 それと、いろいろなお店に行かれるのでしょうか? 

>大阪の焼肉って、おいしいんでしょうね。 是非そちらでご馳走になりたいって思います。 お肉は好きなんです。 あまりたくさんは食べれないんですけど・・・。

>これからますます寒くなります。 お体に気をつけて。


>繭子


手始めに、さりげなくこう書いてみた。 すると亮太からの返事は、驚くほど早く帰ってきた。


>繭子さん


>音楽家を目指す人に日本国憲法の勉強は、シャレにならねぇな。 もっとも俺だって授業をサボってて、憲法なんざチンプンカンプンだけどさ・・・。

>俺がパチンコで稼いでるって、きっとキミはピンとこないだろ。

>無理もないよ。 パチンコなんて、そもそもシロウトが勝てるものなんかじゃないんだよ。

>特殊な技能を身につけてるからこそ勝てるんだ。 そういった技能を身につけた者だけが、パチプロと呼ばれるんだ。

>俺も最初から勝てたわけじゃない。 ちゃんと先輩のプロから教わったんだ。

>プロになるためには釘が見れないといけないし、打ち方もちゃんとしてないとダメなんだ。 そういったことの訓練を俺は受けてきたのさ。

>でもそれのお陰で、俺は自由に生きている。 親に金をせびる必要もない。

>自慢じゃないが、俺はパチンコのお陰で自立できたといえるんだよ。

>それと、もっぱら今は住んでいる近くにある「みやこ」ってホールで稼いでいる。 同じ店でないと、なかなか大変なことも多いのさ。


>追伸

第2外国語のドイツ語を落としちゃった。 来期から中国語に変えることにした。

>どうもドイツ語ってやつは苦手だよ。 キミはどうだい?

>じゃぁな


>亮太


亮太からの手紙は、驚くほど明るい調子で書かれていた。
 
“おそらく彼がパチンコで稼いだ金で暮しているというのは、本当なのだろう。 そして今回、彼はそのことを誇らしげに書いてきている・・・。”

彼の手紙を読み終えた途端、私は息が詰まりそうになった。


パチンコで勝つことを覚えて親に頼る必要がなくなったことが、逆に亮太には災いしたのだろう。 そして経済的な不安がなくなったのと同時に、この家に帰ってくる必要も無くなってしまったのだ。


どう考えても、私にはあのような遊戯で金を稼ぐことなど信じられなかった。 加えて亮太の自慢に溢れた文章からは、彼がそのことを不安に感じている様子などカケラも窺えなかった。 これでは、たまたま上手く取れたセミをガールフレンドに自慢げに見せている小学生そのものである。

“人の気も知らないで、無邪気なやつだ・・・”

そう思いながら、私は目を閉じた。


 ◇


その翌日、私はクラスメートの薮内クンに電話をかけた。 パチンコのことをいろいろと聞くためだ。 彼はもっか浪人中だが、根性無しでちょくちょくパチンコ店に通っていると噂に聞いたからだ・・・。

「ねぇ薮内クン・・・。 パチンコって、どんな遊びなの?」

彼は怪訝そうな声を出した。 

「おい、一条・・・。 突然電話かけてきたと思ったら、なんだよ! そんな話かよ・・・。」


「ごめん! でも、どうしても聞かないといけないことになっちゃってさ!」


「ど、どうしたってんだよ? まさかお前がパチンコしに行くってワケでもねぇんだろ?」

彼はどもりながら、そう答えた。 仕方なく私は現在の情況を話した。 彼は私の話を黙って聞いていたが、しばし沈黙した後こう言った。

「パチンコなんざ、やるもんじゃねぇよ。 実はな、俺、浪人してから毎日のように通ってるんだ・・・。」


「・・・。」


「負けっ放しだよ。 もう、かれこれ10万以上使ってるんじゃないかな。 親不孝モンだよ、俺・・・。 でも、暇だとついつい入っちゃうんだよね・・・。」


「薮内クン、浪人中じゃないの! 来年は芸大を受けるんじゃなかったの?」


「ああ。 確かに、そのつもりだった。 でも、俺ってさぁ。 お前みたいに頭良くないしさ。 そもそも無理なんだよな・・・。」 

そう言って彼は一方的に電話を切った。 彼が最後に残した「そもそも無理なんだよな・・・。」という言葉が、私の耳に残った。


私は彼の話を聞いて一層気が重くなった。 失望のあまり、受話器を手に持ったままその場で佇んでいた。 そしてその時、亮太がどんな方法で稼いでいるにしても、パチンコというものは害のある存在なのだと確信した。

“パチンコは人間を堕落させるんだ・・・。”

私は心の中で何度もその言葉を繰り返した。 薮内クンは真面目な子だったのだ。 それがパチンコを覚えたが為に、ほんの半年ばかりでここまで堕落した・・・。


このことを考えると、戦慄が走った。 何としても大阪に行って、亮太を何とかしなければ!と思った。 


その後も亮太から来る手紙には、パチンコ店での出来事や稼ぎのことなどが多く書かれていた。 そういった手紙を受け取るたびに、私の心は重く沈んだ・・・。


勿論、そんな手紙を父やあず美さんに見せることなどできる筈も無かった。 つまり亮太と私との手紙は、家の中で公然の秘密となったのである。 あず美さんも家のルールに従い、手紙については何も言わなくなった。 逆にそのことが私を一層苦しめた・・・。


亮太からの手紙を、作り笑顔で私に手渡すあず美さんの心中を考えると、私は居ても立ってもいられなくなった。

“大阪に行って亮太に会うんだ!”

その頃から私はたびたびそう考えるようになった。 そしてそれからちょうど1年半後、その夢は叶えられたのだ。


だがそれまでに、かつて無いほど大きな事件が発生した。 この事件によって、斉藤家の家族は全て離散してしまうことになったのだ・・・。


〜続く〜


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砂上の街第二部 第64話 境遇その2

girl6The devil is not so black as he is painted.

悪魔は絵にかかれている程黒くはない


西洋のことわざ



「亮太のオヤジも俺同様、家を飛び出したらしい・・・。」

「それも繭子の場合と同じで亮太が11歳の時っていうから、偶然というのは恐ろしいもんだな。」

父はそう言うともう一度大きくため息をつき、私の目を見た。 
「もっとも時江と違って、あず美はかまっていないと気がすまない性格だ。 このことがあいつにとっては、嫌で嫌でしょうがないんだろう・・・。」


「・・・。」


「繭子も薄々気付いているだろうけれど、何度言ってもダメなんだよ。 あず美はあの通り、亮太にベッタリなのさ・・・。」

「だからあいつは世間のことを全く知らない。 つらいことも恐ろしいことも、苦労することも・・・。」

「まずは、こいつを何とかしないとな・・・。」

最後に父はそう言って、部屋を出て行った。 今まであず美さんが亮太に対して振舞ってきたことを見れば、父の言ったことが正しいのは一目瞭然だった。 間違いなく過保護なのである。 私の場合は逆に放置されて育った。 幼少に受けた心の傷はどちらも同じように深いのだろう・・・。 


だが・・・、亮太がここに戻ってくるのはいつか? それは全く予想も付かないことだった。 “仮に私が手紙でまたそのことを書いたりしたら、逆効果になるかもしれない。” そう思いながら私は一つの決断をしようとしていた。 

それは、あの人を「おかあさん」と呼ぶことだったのである・・・。


 ◇


母が亡くなり、私にはどうしても片づけねばならないことが一つあった。 それは遺産相続である。 この件に関しては全て辻井弁護士に任せてあったが、相続人が私一人なので意外に早くその時期がやってきた。


横浜の自宅は保険会社から団体生命保険の保険金支払いがなされ、根抵当権が抹消された。 母が居なくなった時より、私はあの家を売却することにいささかの抵抗も無かった。 実際に維持費だけで驚くほどのお金が必要だったし、誰も住んでいないまま放置しておくのも気になってしょうがないからだ。


不動産会社に売却を依頼し、買い手が見つかったのが11月。 相続が全て終了した時、私が母から引き継いだものは現金5600万円と装飾品・衣類などである。 そしてその時点で一条時枝という人物がこの世に生きた証は、私が持つ遺影とアルバム数冊だけとなった。


思えばこの世に生を受けて僅か19年ばかりで、私はこれだけの遺産を相続することになった。 今考えてみれば、お金というものは必要な時手許に無いものである。 人生の神様とは、何と意地悪な人物なのだろう。 わけもわからない少女に無駄な大金を与え、彼女が成人して本当にお金が必要になった時には横を向いたのだ・・・。


その後、私は亮太と何通か手紙のやり取りをした。 亮太から4通目の手紙を受け取った時、私はその手紙をあず美さんに見せようと思った。 そしてその時に、決断していたことを実行しようと心に決めていた・・・。

「繭子さん・・・、また亮太から手紙が来てるわよ!」

あず美さんは私の目をチラリと覗き込みながら、手紙を差し出した。 その顔には、私への嫉妬が見え隠れしていた。 自分に手紙が来ないのに私に来るということは、あの頃の彼女にとって大きなストレスだったに違いない・・・。 私は今回がチャンスだと直感した。


>繭子さん
>どうも妹とは呼びにくいもんだね。

>今年もいよいよ終わりに近いけど、元気にしてるかい。

>俺は元気にしてる。 大阪は変わった街だけど、気に入っているんだ。 

>俺の住んでいる辺りは焼肉屋の多い場所で、週に1度は肉を食べに行くんだ。  キミは焼肉が好きか? もしこちらに来ることが有るのなら、案内するんだけどね・・・。

>でも近いうちに、俺の方からそちらへ帰ることはないと思うよ。 せいぜい、オヤジやオフクロと仲良くやってくれ。

>それと、前の手紙で訊ねられた俺のバイトについてだけど、特殊なバイトなんだ。

>これについては、またオフクロに知られたら大騒ぎされるから秘密にして欲しい・・・。 約束してくれるかい?

>俺のやってるバイトってのは、パチプロなんだ。 つまりパチンコで勝って、お金を稼いでる。 ウソなんかじゃないよ。

>これだけで月に20万円くらいにはなる。 自慢じゃないが、それで衣食住全てと学費がまかなえる。 

>まあ、こんな感じで自由奔放に生きてる。 これから寒くなるけど、風邪など引かないようにしてくれ。

>亮太


私は今回の手紙を見て、手を振るわせた。

“パチプロ・・・!”

この言葉を見た途端、気分が悪くなった。 吐き気がした・・・。 以前私の進路相談を時間が無いと早々に終らせ、駅前のパチンコ店の景品交換所の前で立っていた担任の大泉が思い出された。


あの時私は、大泉を最低な人間だと思った。 そして同時に、母が定時制高校に通いながら懸命に貯めた預金を祖父が勝手に引き出してパチンコに使ったことを思い出した。


どう考えても、パチンコをする人物はクズのような気がしてしょうがなかった。 私はそれまでにも、景品交換所で景品を現金に交換する人をたびたび見かけてきた。 ろくでもない風体の男が、コソコソと隠れてそうしていることが多かった。 賭博なのに駅前などで堂々と営業し、いかにもわけありのような人ばかり出入りするパチンコを、私は心から嫌っていた。


そして今回亮太からの手紙で、彼があろうことかパチンコをバイト代わりにしていると知った・・・。 

“なぜ、そんなことになってしまったのだろう?”


私はそのことが気になって、居ても立ってもいられなくなってしまった。 できる限り穏やかに、そして亮太に自分の本音を悟られないように返事を書いた。 そして手紙の中で亮太がパチンコをするようになったいきさつをさりげなく聞き、彼の現在の生活を探ろうと考えたのである・・・。


〜続く〜


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