ギャンブル依存症克服はストーリーを読んで!

ギャンブル依存症を題材にした小説はいろいろと有りますが、ここでは読むだけでギャンブル依存症を克服し、防止までしちゃおうって寸法です。 きっとあなたのお役に立てると思います、是非お読み下さいね!

『砂上の街』 第18話〜帰郷 

『砂上の街』 第18話〜帰郷
 

〜俺は横で眠るユウコの顔を見ながら考えていた。〜


“今週の日曜には家に帰るように言われている・・・。 これは家の行事だ、帰らないわけには行かないだろう。”


何よりも繭子と顔を合わせるのが、とても気まずかった。

“でも帰らなかったら、おふくろのことだ!今度は大阪まで出て来て今の生活についてとことん問い詰めるだろう・・・。”


〜考えれば考えるほど憂鬱だった。〜


その翌々日、俺は観念して家の法事に合わせて帰郷することにした。 思えば、もう半年以上実家に帰っていない・・・。

“早いもんだ、もう半年か・・・。”


俺はそう思うと、少し後ろめたい気分になった。

“この半年の間で、俺はユウコと知り合ってヒモ同然に同棲するようになり、昼間はアルバイト代わりとはいえ、ずっとパチンコ屋へ入り浸っている・・・。”


しかしながら、今更家庭教師やどの他のアルバイトをすることなど出来なかった。 パチンコで稼ぐというスリルと、金を得た時の喜びは他の仕事とは比べ物にならなかったのだ。


“普通の人間が負けるもの、それがパチンコだ。 俺はそいつを、俺一人の力で打ち、負けるどころか普通の学卒の社員の初任給の倍以上稼いでいる。 毎日頑張れば、月に25万から30万は稼げるだろう・・・。”


俺は服を着替えながら一旦実家に戻ることをユウコに話し、ユウコのアパートを後にした・・・。


 


その日の俺はいたって好調だった。 朝一で楽勝の看板を一台せしめ、その機械を12時半に終了らせた。


その後、チェックしていたもう一台には客がつかず、その台もアッサリと終了らせた。 2台目に札が入ったのが、ちょうど4時・・・。 全く無駄なしで、2万少しの金を得た・・・。


先日声をかけられ、「終了らせるのは1台だけにしろ」といった男の顔が浮かんだが、気にしなかった。 その男たちの一派も今日は朝から見かけないように思えた・・・。


PCGAH俺は悠々と店を後にし、アパートへ戻ると明日の為の着替えを用意した。 着替えをバッグに詰め込んで帰省の用意を済ますと、いつものようにパチンコ台に向かった・・・。


“師匠のように、チューリップにダブルで放り込むにはどうすればいいんだ・・・!”


そのことばかり考えて打ち続けた。 しかしながら、どう頑張ってもまぐれでさえ、2個の玉を同時にチューリップに放り込むことなどできなかった。


“なぜ・・・!?”


普通に打っていても、たまたまダブルでチューリップに入ることはよくある話だ・・・。 でも、狙って打ったときに限って、なぜこうもダブルで入賞しないのだろう・・・?


俺はそのことが不思議でならなかった。 それからも1時間、俺は打ち続けた・・・。


しかしながら、どう頑張っても玉は2個同時にチューリップには入賞しなかった。 右に大きく打つと、どうしても次に打つ球の軌道が大きく遅れてしまう・・・。


狙う場所を打つたびに変えることも、全く効果なしだった・・・。


さすがに俺も嫌になり、その場にゴロリと横になった。 その時、ふと師匠が右チューリップのダブルを狙う時の姿が思い出された。

“そういえば、師匠は狙う時にいつも左手をハンドルに添えて打っていた・・・。”


〜俺は再び台に向かって打ち始めた。〜


“両手を添える・・・、でもどういうふうに・・・?”

俺はあの時の情況を必死になって思い出そうとしていた。


“そういえば、あの時・・・、”


師匠がハンドルの下を、人差し指で支えながら打っていたことをおぼろげに思い出した。


そしてそのようにして打ってみると、弾かれた玉は大きく右のワクを跳び超えて飛んでいった。 考えて見れば当たり前のことだった・・・。


〜ハンドルの下に指を添えれば、テコの原理で玉は大きな力で弾かれるのだ・・・。〜


俺は、コレだ!と思った。 同様にしてすばやく2回打つと玉は殆んど同時くらいのタイミングで右のチューリップに向かって飛んでいく・・・。


台のガラスを開けて右のチューリップを開け、再び試し打ちしてみた。 そして3回目の挑戦で、見事ダブルで入賞した。 同時に3発打てば入賞率が上がることも、その後打ち続けるうちに分かってきた・・・。


〜こうして俺は夢中になって台に向かった。〜


  


翌日、俺は久しぶりに自分のアパートで目覚めた。 ユウコのアパートでは、たいてい先に目を覚ますのが俺の方だった。


目を覚ますと、近くのパン屋へ行きユウコの好きなクロアサンと乳飲料を買って帰るのが日課だった。 でも、今日はその必要もない・・・。


ボストンバッグを片手に、地下鉄に飛び乗った。 ポケットには、枚数さえ数えずに無造作に折りたたんだ数枚の万札を放り込んだ。


新大阪で乗車券を買い、新幹線のホームで楽点軒のシュウマイと缶ビール2本を買ってこだまに乗り込んだ・・・。


車内はガラガラだった。 こだまはゆっくりと動き出し、聞き覚えの有る音楽とともにアナウンスが流れた。


4人がけのシートを回して、向かいの席に足を投げ出してビールを口に含んだ。


KKYHU〜遠ざかる大阪の下町を眺めながら、考えた。〜


“そういえば俺は今まで汽車に乗っても、必ずと言って良いくらい進行方向に背を向けて座っている・・・。”

“今までから俺は、過ぎ去っていくものばかり見て来たんだ・・・。”


ふと実家にいる繭子のことを思った。 俺は、繭子に会ったことが無い・・・。


“どんな子なんだろう・・・。”


いかにも優等生らしいはきはきした女の子の姿が目に浮かんだ。 これからもずっと繭子と比較されて生きていくことを考えると、堪らなくつらくなった・・・。


大きく溜息をついて飲みこんだビールは、いつもよりも苦く鉄の味がした・・・。


 〜続く〜


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ギャンブル依存症克服ストーリー『少年と二人の神』連載完了のお知らせ

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『少年と二人の神』です・・・。〜


この『少年と二人の神』は、うかつに賭博をする怖さと、賭博がいかに人の人生を堕落させるかということをテーマに書かせていただきました。


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『少年と二人の神様』
            作 タカビー



パソコンからご覧のあなたは、つぎのURLからダウンロードなさってくださいね!  

http://fp-osaka.com/story/story2.zip



もし閲覧されるのでしたら、次のURLからご覧くださいませ!

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『少年と二人の神様』
            作 タカビー



昔あるところに、一人の少年が住んでいました。 少年は家が貧しかったので、鍛冶屋の親方の館に住み込んで働いていたのです。


少年は親方のもとで働きながらも自分の家へ仕送りし、僅かづつではありましたが貯金もしていました。


少年はとても真面目で、親思いの優しい子でした。


〜少年には夢がありました・・・。〜


それは自由に空を飛ぶことだったのです。


毎日、親方の下で働きながらも、いつも少年は空を飛ぶことばかり夢見ていました。 そしていつしか・・・、


忙しい仕事に追われながらも、少年は空を飛ぶことを夢に見続け、やがて翼が欲しいと願うようになったのです・・・。


〜少年は祈り続けました。〜
毎日、神に願い、そして祈り続けたのです。


“かみさま・・・、どうか私に翼を与えてくれませんか・・・?”

“もし翼があれば、私はどんなに幸せに生きることが出来るでしょう!”

“そしてこの世の果てまでも飛んで、本当の自由を手に入れることが出来るのです!”


彼は毎夜のように、そうやって神に祈りを捧げました。 


しかしながら、少年の夢は決して叶えられはしなかったのです・・・。


とある日のことです。 天国に居る神々の中で、その少年の姿にふと目を留めた神が居ました・・・。


その神は、天国の神々の中でも一番慈悲深い、心の優しい神だったのです。


その神は、何とか少年の願いを叶えてやれはしないかと、それから毎日のように考えるようになりました。


しかしながら・・・、


天国の掟で、人間に翼を与えることは許されていなかったのです・・・。


そんな時、少年の姿を見つけたもう一人の神が居ました。


その神は、天国の中の神々の中でも一番ずるい、残忍な神でした。


この神は、真面目に働く少年を堕落させてやろうと考えました・・・。


そう思ったその神は、或る月夜の晩に少年の前に現れ、少年にこう囁いた(ささやいた)のです・・・。


「お前が、本当に翼を欲しいというのなら、良い方法を教えてやろう・・・。」

「いいか、俺の言うとおりにやるんだ! まずは今の仕事をすぐさまやめてしまえ!」

「そして、有るだけの金を持って隣町へ行き、そこにある賭場で俺の言うとおりに金を賭けるんだ・・・。」

「ルーレットの前に座れ! そして最初の勝負で有り金全てを、6の目に賭けろ。」

「お前は必ず勝てるだろう、勝てればお前の家族へもすぐに仕送りが出来るだろう。 仕事もしなくてすむ・・・。」

「ただしその勝負1回だけで必ず帰ってくるんだ。 いいか!それ以上やってはならない。」

「そうしないと、お前はとんでもないことになると思え・・・。」

「すぐさま、そこまでやるんだ! お前がやったことを見届けてから、俺はまたここに来るとしよう・・・。」


そう言うと、その神は少年の前から姿を消したのです。


少年は思い悩みました。 しかし本当に翼を得れるのなら、そうしてみよう!と思いました。


すると突然その時、少年の前に別の神様が現れました。 その神は、慈悲深い優しい神だったのです。


〜神は少年にそっと優しく言いました。〜


「少年よ、私はずっとお前の願いを叶えてやろうと思っていた・・・。」

「でも、天国で人間に翼を与えるのは禁じられているんだよ。」

「今はこれまでのように、頑張って真面目に働きなさい!」

「そうすれば、お前の欲しい自由も叶えられるし、皆を幸せに出来る・・・。」

「そして、好きなところに旅する事だって出来るんだよ・・・。」


神はそう言って、少年の前から姿を消しました。 そしてすぐにまた少年の前に舞い戻ってくると、少年にこう言いました。

「それと・・・、お前がさっき出会ったのは、天国で一番ずるく、残酷な神だ。」

「決して、あいつの言うことを聞いてはならないよ・・・。」

「人間は、真面目に働かなければ幸せを得ることは出来ないのさ・・・。」


そして神は少年の前から姿を消し、もう戻っては来ませんでした。


それからの数日、少年は思い悩みました。


幸せになる為に真面目に働くか、翼を得る為に仕事をやめ隣町の賭場に勝負しに行くか・・・。


本当に思い悩んだのです。でも少年が選んだのは・・・、


〜愚かにも楽な方だったのです・・・。〜


その次の日少年は親方の元へ行き、仕事を今日限りでやめさせてもらえるように頼みました。


親方は驚きました。 そして真面目に働く少年をたいそう気に入っていたので、必死で思い留めようと思ってこう言いました。

「いったいお前はどうしたっていうんだ! 何かあったのかい? 私が力になれることであれば、何でも言ってごらん・・・。」


でも少年は、ただ一言今まで世話になった礼を言っただけで、その言葉も聞かず親方の元を飛び出したのでした・・・。


少年は残酷な神に教えられたとおり、隣町の賭場まで行きました。 ポケットには、今まで勤めてコツコツ貯めた僅かばかりの貯金と、そして最後に親方が手渡してくれた1クローネの銀貨が1枚・・・。


少年はこの1クローネの銀貨だけは、使わずに取っておこうと思いました。


なぜならその銀貨は、最後に親方と別れるとき・・・、

「これを持ってお行き・・・。 そして、最後に困ってどうしようもない時に使うんだよ。」


そう言って手渡されたお金だったからです。 そのお金をもう片方のポケットに仕舞いこんで、少年は賭場へと向かいました。


少年は賭場に着くと少し躊躇い(とまどい)ました。 今までから、賭場はろくでもない人間が出入りする所だと聞かされていたからです。 しかし思い切ってそのドアを開けました・・・。


賭場の中は、大人たちが皆顔を真っ赤にして、怒鳴ったり喚いたり(わめいたり)して、何ともいえない不愉快な場所でした。


少年は、言いつけどおりに一台の古ぼけたルーレットの前に座ると、ポケットからお金を取り出しました。


「ほう! 坊や、そこで何をしようっていうんだい?」


横から冷やかし半分で声をかける男の方を振り向きもせず、少年はポケットに手を伸ばしました。 そして、全てのお金を掴むとこう叫びました。

「これを・・・、全部6番に!」


真ん中にいた男は、驚いて少年をみつめました。 しかしすぐに少年の手からそのお金を受け取ると、6番の上に全ての札を置きました。


“どうぞ6番にあのボールが入りますように・・・。”

“そして、僕の願いが叶いますように・・・。”

少年は祈り続けていました。

 
しばらくしてルーレットの回転が緩やかになり、やがてその小さなボールはゆっくりと数字の書いてあるフレットの上を転がり始めました。


そして、吸い込まれるように6番に滑り込んだのです・・・。


周囲の大人たちの驚く声と歓声を無視して、少年は分厚い札束を掴むと逃げるようにしてカジノを後にしました・・・。


 ◇


>親愛なるお父様 お母様


>僕は元気にしています

>今はもう鍛冶屋の親方の所では
>働いていません

>でも、もっとたくさんのお金を
>稼げるようになったのです


>今日はこれだけのお金を
>送ります

>これでお婆さまに、もっと
>良い薬を飲ませてあげてください

>もっとたくさん送れるように
>僕はしっかりがんばります



少年はそう手紙を書くと、自分が暮らしていけるだけのお金以外の全てを父母の元へと送りました。


〜少年は幸せでした。〜 


簡単にお金が手に入ると思ったからです。

自分に翼が与えられると思ったからです

そして、皆を幸せに出来ると信じていたからです。


〜そしてこう思っていたのです。〜


“幸せを手に入れることは容易い(たやすい)ことであると・・・。〜


少年は、その日の宿を探そう思いました。 少しばかりの荷物を詰めた小さな鞄と行李(注1)を手に持ち、夜の街を歩き続けたのです・・・。


でも、全く宿が見当たらなかったので町外れの庵(注2)まで来て、そこで宿を借りようと思いました。


少年が古ぼけた扉を叩くと、中からしゃがれた男の声が聞こえました・・・。

「どなたさんじゃね? こんな夜更けに・・・。」


少年は外から、その声の主に向かって話しかけました。

「すみません・・・。 今夜一晩、宿をお借りできませんか?」

「街には宿が無くて、困っているんです・・・。」


「いいじゃろう・・・。 開けなさい。」


中に入ると、部屋はきれいに片づけられ、暖炉では火が赤々と燃えていました。 テーブルの上には、いろんな料理が並べられていて、ちゃんと食器まで用意されています。

「さあ、良かったらお食べ! 外は寒かったろう・・・。」


中に居たのは一人の老人でした。 少年は振り返ったその老人の顔を見ると、あっと驚きました・・・。


その老人は、あの日最初に少年が出会った方の神でした。 神は言いました。

「どうだ! ちゃんと稼げただろう・・・?」


少年は、目を輝かせて言いました。

「あなたのご恩は、一生忘れません。 すぐに家にお金を送りました・・・。 これで祖母にちゃんとした薬を買ってあげれます!」


神は笑いながら少年に言いました。

「お前はしばらくここに住むがいい。 そうして毎日俺が言ったように隣町の賭場に行き、勝負してくるのさ。」

「そうすれば、必ずお前は勝てる・・・。 明日お前が賭ける番号は16番だ!」

「ただし、16番に賭けるのは3回目の勝負だ。 それまでは、どこでもかまわない。 適当な数字に1クローネづつ、2回賭けるがいい・・・。」

「そして、3回目に有り金全て勝負したら、すぐにやめて帰って来い。 いいな・・・。」


そう言うと、神は少年の前から姿を消しました。 少年はテーブルに残された料理を口に運びました。


そのいくつもの料理は、これまで少年が一度も食べたことが無かったほどおいしい料理でした。


少年は満足でした。

少年は幸せでした。

少年は明日が待ち遠しいと思いました。

3回目の勝負で、ボールが16番に転がり込むことを思い浮かべ、とても嬉しく思いました。


 


次の日の夕方、少年は同じように隣町の賭場まで行き、また神に教えられたとおり勝負しました。


最初の2回は勝てませんでしたが、3回目に教えられたとおりすると、ボールは吸い寄せられたように16番に転がり込みました。


また少年は勝ち、意気揚々と庵へと帰ってきました。 中で待っていた神は少年に言いました。

「明日、お前が賭ける番号は8番だ。 ただし8番に賭けるのは、5回目の勝負だ、それまでは好きな数字に4回1クローネづつ賭けるがいい・・・。」


そして神は昨夜と同じくご馳走の並べられたテーブルを残し、立ち去っていきました。


少年は残されたテーブルの料理を頬張り、満足でした。 そして明日の勝負のことを考えると、心がうきうきとしてきました。


翌日も少年は賭場に行き、神に言われたように勝負を始めました。 昨日は1回目と2回目の勝負に負けました。 ところが今日は、負けると思っていた3回目の勝負で1クローネを賭けた5番にボールが転がり込みました。


少年は、驚きました。自分が勝てるとは思わなかった勝負に勝ったからです。 でも考えてみれば、偶然勝てることもあって当然なのです。


少年は、次の4回目の勝負で同じく5番に1クローネ賭けました。 するとまた、5番にボールは収まったのです・・・。


少年は思いました。

“しまった! もっとたくさん賭けていれば、もっと儲かっていたのに・・・。”


そして次の勝負で、神に言われたように全てのお金を8番に賭けました。 すると・・・、


〜ボールは8番に転がりかけたものの、今度は何と隣の9番に落ちたのです。〜


少年は悔しさのあまり手を震わせ、それから肩を落として庵へと向かいました。 全ての金を失い、残された金は親方から手渡された1クローネだけが残りました。


庵に着くと、少年はドアを開けました。


〜すると、今日は暖炉の火も消えテーブルには、料理は何も置かれてはいませんでした。〜


ただ・・・、


テーブルの上に一言書かれた紙切れが残されていました。 その紙切れには、こう書いてあったのです。


“明日、勝負に行ってはならぬ。”


〜少年はその紙を見て絶望しました。〜


“何ということだ! 僕は勝負に負けたばかりか、明日勝負に行ってはいけないとまで言われてしまった・・・。”

“そればかりか、今夜はこんな火の消えて凍えた部屋で、食事も摂らずに過ごさねばならない。”


少年はテーブルに肘をつき、頭を抱えました。

“どうすれば良いのだろう・・・。”


そして、何気なく右のポケットに手を伸ばすと、そこにあったのは親方から渡された1クローネの銀貨だったのです。


“1クローネの銀貨が1枚・・・。”


少年はその銀貨を手に取ってみました。 そしてその時思い出したのが、今日偶然にも1クローネづつ賭けて勝った2回の勝負だったのです・・・。


“この1クローネで、明日勝負すれば勝てるかもしれない!”


少年はふとそう思ったのです。 しかしながら・・・、


テーブルに置かれた紙には、“明日、勝負に行ってはならぬ”と書かれてあるのです。


少年は思い悩み、神からの言葉の書かれた紙を手に取りました。 するとその紙は一瞬宙に舞うと、ハラリと床に落ちました。


少年は慌てて、その紙を拾いあげようとしました。 そして跪いて(ひざまずいて)紙を拾いあげ目を上に向けると、そこに立っていたのは、心優しい方の神でした。


〜神は少年に向かって、厳しい口調で言いました。〜


「少年よ、お前は罠にかかったのだ! お前が2回も勝負に勝てたのは、魔性の力のせいなのだ・・・。」

「明日からは、またあの主の下で真面目に働くがいい。 そして、これからは決してあの神の言うことを聞いてはならぬ!」


少年は驚きました。 そして神に尋ねたのです・・・。

「それでは、あなたがあの神を・・・。」


「そのとおり・・・。 いかにもわしがあの悪い神を追い出したのだ。 これからは決してあのような場所へ行ってはならぬ。 賭博は人間を堕落させるには、一番簡単な方法なのだ・・・」


「私はもう行くとしよう。 だが安心するがよい! お前が心を入れ替えるなら、もう二度とあの神はお前の元へ来ることは無い・・・。」


〜そういい残すと、神は姿を消しました。〜


 ◇


部屋に残された少年は、迷っていました。 明日親方の元へ戻って真面目に働くか、それとも先ほどの神の言いつけに背いて勝負に行くか悩んでいたのです。


しかし少年はふと思いました・・・。

“今の神はあの神を悪者だと言ったが、あの神はずっと僕の願いを叶えてくれたではないか!”


確かに少年はあの神の言葉を信用して従ったおかげで、病の床に居る自分の祖母へ、よく効く薬を届けることが出来たのです・・・。


前の晩も暖かい部屋で、あんな素晴らしいご馳走にありつけたのでした。


〜少年は、もう迷いませんでした。〜


親方から手渡された最後の1クローネを手に取り、残された最後のコインをどのように賭けるか考えていたのです。


〜すると突然、少年の手からコインが滑り落ちました!〜、


コインを拾い上げた少年の前に立っていたのは、残酷なあの神だったのです・・・。


神は少年に向かって笑いながら言いました。

「どうした! そうだ・・・、腹が減ったろう。 それにこの部屋は寒い・・・。」

そう言って、神は左手で暖炉を指差しました。 そして右手でテーブルを撫でました・・・。


するとどうでしょう! 暖炉の火は煌々と燃え始め、テーブルの上は見事な料理が、見る見るうちにいくつも並びました・・・。


少年は残酷な神の足元に跪き、言いました。

「お願いです! 私にもう一度勝負させてください!」


残酷な神は顔色を変えることも無く、言い放ちました。

「お前は、いいつけに背いたな!」


「お前は今日、勝負に勝てなかった筈だ・・・。」


「はい、その通りです。 しかし・・・、私は決して言いつけに背いてなどいません!」


残酷な神は、少年の目を睨み付けました。 そしてこう言ったのです。

「お前の左のポケットに有るのは何だ!?」 


少年は、はっとしました。 なぜなら少年の左のポケットには、親方から手渡された最後の1クローネの銀貨があったからです・・・。


「俺はお前に言った筈だ! 有り金全てを8番に賭けて来いと・・・。 お前はその言いつけに背いたのだ・・・。」

「だからお前は勝てなかったのだ。 愚か者め・・・。」


少年は愕然としました。 そうでした、少年は親方の言葉に従って、最後の1クローネ銀貨を右ポケットに仕舞い込んでいたのです・・・。 神は続けました。

「そんなものを大切そうに仕舞い込んでいるから、勝負に負けるのだ。 勝負するならとことんだ! それが勝負の掟というものなのだ。」

「お前は俺のいいつけに背いて、最後の1クローネを残した・・・。 確かにそれを残せば、今日明日くらいは一切れのパンを買うことも出来よう。」

「だが、そんなことをして何になる! 一日や二日のパン一切れの為に、はした金を取っておいて何になる・・・?」


「では、どうせよと・・・?」

少年は、懇願するように神に尋ねました。 神は言いました。

「最後の1クローネであろうと、とことん勝負するのだ!  そうすれば、一日や二日どころか一年二年遊んで暮すことが出来よう!」

「真面目に働いて何になる? 一回勝てば、それだけの金が得れる・・・。 それが賭けるということなのだ! ところで・・・、」


残酷な神は唇を歪ませ、にやりと笑った。

「お前は、そんなに翼が欲しいか・・・?」


少年は答えました。

「はい! でも・・・、今は翼よりも明日の勝負の行方の方が気になります。」


神は大笑いして言った。

「お前は、たいしたやつだ!」

「そうだ、その通りだ! 自由になって何になる、空を飛んで何になる・・・?」

「勝負に勝って金を得れば、何だって好きなことが出来よう! どんな望みも叶うものだ・・・。」

少年は神に尋ねました。

「では、明日より私はどうすれば良いのでしょう?」


神は冷酷な眼差しで少年を、じっと睨み微笑みました・・・。

「お前は俺の言いつけに背いた。 ただ、もう一度だけチャンスをやろう・・・!」


少年は心をときめかしました。 神は目を細め少年の姿を見つめました。

「どうだ? まだそんなに翼が欲しいか・・・?


「いいえ! 神様・・・、翼よりも勝負に勝たせてください。 そうすれば、家にもお金を送れます。 そして・・・、」


「そして・・・、どうした・・・?」


「私自身もとても嬉しいのです。 勝負に勝てば楽しく、何もかもがうまくいきます。 幸せなんです・・・。」


「よし! それならば教えてやろう・・・。」

神はまた口を歪め、微笑むと少年に話し始めました。

「明日の最初の当たり番号は7だ。 最初は7に1クローネ賭けるがよい・・・。」

「その次の当たり番号は14だ。 ただし・・・、」


「ただし、どうなのですか・・・?」

少年はその次の言葉が知りたくてどうしようも有りませんでした。 少年は燃えるような目で神を見つめました。


「2回目に14と来るか、3回目に14なのかは明かさぬことにする。 お前の力で考えて賭けてみよ!」

「2回目か3回目かは、お前が考えて賭けるがよい。 そして・・・、」

「3回の勝負を終えたなら、必ず戻ってくるのだ。 そうしないとお前はとんでも無いことになる・・・。」

「それともう一つ・・・。」

「勝負が終わるまでは、誰とも口をきいてはならぬ。 このこともよく覚えておけ・・・。」


少年は、少し不安になりました。 

「とんでもないこととは・・・?」


神は顔色を全く変えることなく、言いました。

「お前が賭場で、見て来た者どもと同じようになるということだ。」

「あれらは、鳥とはまた違った翼を持っているのだ・・・。」


残酷な神は、最後に意味ありげにそう言うと、少年の前から姿をくらませました。


 ◇


次の日、夕刻を待って少年は賭場へ行きました。 そして昨日と同じルーレットの前に座ったのです。


すると、隣にいた男が声をかけました。

「嘆かわしいことだ・・・。」


少年と目が合うと、その男は寂しそうな声でこう言いました。

「俺はこいつのせいで、女房と別れた、家族を失った、信用も無くした、全ての金を失った・・・。」

「今日、この1クローネの勝負に負けたならば、あとは首をくくって死ぬだけだ。」

「何とか、勝たせてくれ・・・!」


そう言って、その男は手を合せているのです。 少年は思わず、次の当たりが7番であることを教えてやろうと思いました。 しかも1回か2回目後には、14へとボールは転がり込むのです・・・。


この男は次の勝負で負ければ、首をくくるとまで言っているのです。 しかし、少年はそのことを話そうとはしませんでした。 なぜなら・・・、


あの神に約束していたからです。 勝負が終わるまで、誰と口を聞いてもならないのでした。


ルーレットが回り始め、少年は7へ、その男は何と14へ1クローネを賭けました。 男はひとり言のように呟き(つぶやき)ました・・・。

「そうさ! 14だ。 俺は14に賭けて一度に20万クローネ勝ったことがあるんだ・・・!」


そしてルーレットが止まったととき、ボールは少年が賭けた7番に入っていました。 男は突然立ち上がり、奇声をあげて表へと走り去りました。


〜そして、二度と戻っては来なかったのです。〜


少年は最早疑いませんでした。 次に必ずボールが14番に転がり込むと信じたのです。


〜少年の狙いは的中しました!〜


瞬く間に少年は、1200クローネもの大金を得たのです。しかしここで少年は迷いました・・・。

“神は、3回の勝負をして帰って来いと言った・・・。”


少年は戸惑いませんでした。 自らの金の半分を、昨日に勝負して2回勝った0に賭けたのです。


するとボールは、何とさっきと同じように14に入りました。 少年は驚きました。 そして、途方も無く悔しかったのです・・・。

“もう一度あの14番に賭けていたら、どれほど儲かっていたのだろう・・・!”


〜そして思いました。〜

“あの男も、この勝負で14に賭けることが出来れば、たんまりと勝てていたのに・・・。”


でも、神からは3回の勝負で帰って来いと言われているのです。 少年は諦めて帰ろうと思いました・・・。


〜しかし、悔しかったのです。〜 


今、無駄に賭けた半分のお金を失ったことを考えると、とてつもなく悔しく感じました・・・。 そして次は今自分が賭けた0にボールが滑り落ちるような気がしました・・・。


でも、勝てる保証は無いのです。 ましてや、神の言いつけに背くことにもなるのです・・・。


〜少年は掟を破りました。〜


“一度だけ、そう!1クローネだけ、次に勝負してみよう!”


そう思ったのです。 そして1クローネ銀貨を一枚つまむと、0番の上に置きました。


そして驚いたことに次にルーレットが止まった時、何とボールはまたしても14番に入っていました。


少年は悔しさのあまり手を震わせました。 そして次は3枚の銀貨を手に取ると、14番の上に置きました・・・。


すると、次にボールが転がり込んだのは1回前に少年が賭けた0だったのです。 それから少年は我を忘れて賭け続けました。


しかしながら・・・、


〜少年は二度と勝てることは無かったのです・・・。〜


 


少年は庵に戻ってきました。

少年は全ての金を失いました。


しかしながら・・・、少年が失ったのは、お金だけではなかったのです。


部屋の中には誰も居ませんでした。 ひっそりと静まり返った部屋の中で、少年はテーブルに座り一人考えていました。

“明日からは、真面目に働こう!”


そう少年は決心し、自分の荷物をまとめ始めました。 そして次の朝少年は親方の元へ行き、再び働かせてもらえるよう頭を下げて頼みました。


親方はたいそう喜び、少年を暖かく迎えてくれました。 少年は真面目に働きました。 以前にも増して頑張って働いたのです。


そして、次のお給金をもらう或る日のこと・・・、

「さあ! このお金は、お前が一生懸命汗水をたらして働いて得たお金だ。 大切に使うんだよ・・・。」

そう言って、親方は50クローネを少年に手渡しました。 その時、ふと少年は思ったのです・・・。

“2クローネを賭けて、1回勝負して勝てば手に入る金額だ・・・。”


〜そうでした、あの時少年が失ったのは1クローネの銀貨だけではなかったのでした・・・。〜


一度食べた甘い果実の味を忘れることが出来ないのは、
よくある話です。


 


夕暮れになり仕事が終わると、少年はおかみさんが作ってくれたミートパイとスープを平らげ、こっそりと親方の屋敷を抜け出しました。


一度だけ勝負しようと少年は考えたのです。 そして少年はこうも考えていました・・・。

“1クローネだけ勝負しょう! その1回の勝負に負ければ絶対に帰ってくるんだ!”


〜それ以上はやらないと誓って、賭場へと向かったのです。〜


賭場の中は煙草の臭いが充満し、酔っ払いの男や大声で喋る人で溢れていました。 そればかりか、この日は大声で罵り合う声まで聞こえました・・・。

「さあ! とっとと帰った! 金の無いやつに用は無いんだよ。」

ルーレットの横に立つ男が、声を荒げて怒鳴りました。 怒鳴られた男は、床に手を付きその男に向かって必死で頼みました・・・。

「頼む・・・。 あと1回勝負させてくれ! あと1回だけでいいから、そうすりゃ必ず14に来るんだ。 お願いだ、頼む! このとおりだ・・・。」


しかしながら男は、他の男たちの手で掴まえられ、外に放り出されました。


“14・・・。”


少年はその数字を聞くと、すぐさまそのテーブルに駆け寄り、ルーレットの前に座りました。 そして次の勝負で1クローネ銀貨を手に取ると、14の上に置きました。


ルーレットの回転が緩やかになり、玉はフレットの上を飛び跳ねていきました。 そして視界から玉が消え、玉を数字の上に乗せたままホイールはゆっくりと回り続けました。 そして・・・、


少年の前に玉が来たとき、玉は14の上に乗っていました・・・。


少年は自分の予感が的中したのが嬉しくて、たまりませんでした。 そして、さっき外へ連れ出された男のことなど、とうに忘れ去っていたのでした・・・。


少年はたった1回の勝負で、36クローネを手にしました。 でも、次の勝負も勝てるのではないかと思いました。

“2クローネを賭けて勝てば、一月の給金以上に稼げる・・・。”

少年はそう思って、もう左手には次の銀貨を2枚握り締めていたのです・・・。 


もう誰にも少年を止めることなど出来ませんでした。 それからも少年は賭け続け、その後は一度たりとも勝てませんでした。 少年は瞬く間に全ての金を無くしたのです・・・。


「さあ、まだやるのかね!? やらないなら、他のお客さんが待っているんだ。 そこをどきな・・・!」


男の声に急かされるようにして、少年は賭場を後にしました。 今朝親方から貰った60クローネは、全て使い果たしました。 少年は呆然として歩き続けました・・・。

“ああ! なんということだろう!”

“僕はこんな賭博に手を出して、家に仕送りしなければならない金までも全て使い果たしてしまった・・・。”

“これから、どうすればいいんだ!”


〜この時、少年に残された方法はたった二つしかありませんでした。〜


一つは、親方に手をついて謝り、自分のしたことを全て話して許しを請うことでした。


しかし・・・、それは許されないことだと思ったのです。 少年は、自分が勝手に館を飛び出し、再び暖かく迎えてくれた親方に、これ以上迷惑をかけることは出来ませんでした。


もう一つは、自らの命を絶って故郷の父と母、そして祖母に償うことだったのです・・・。

“お婆さん・・・。 僕はこんな馬鹿なことに手を出してしまったせいで、あなたへお薬代を送ることさえ出来ませんでした・・・。”


そう思い、少年は涙ぐみました。 そして、死んで詫びようと心に決めたのです。 

“なぜあの時、最初の神の言うことを聞いておかなかったのだろうか・・・?”


少年は、自らの心に問うてみました。 しかしながら、翼が欲しかったという理由以外には、何も思い浮かばなかったのです。 少年は、ふと思いました・・・。

“翼を欲しいと思った僕の心が、間違っていたのだろうか・・・?”


でも、答えは出ませんでした。 少年は一層、生きているのが辛くなりました。 天に召され、翼を与えてもらえるのならそれでも構わないと思ったのです・・・。


 


意を決して少年は、歩き続けました。 あの庵を目指したのです・・・。


暗闇の中を歩き続け、庵にたどり着いた少年は、その扉を開けると埃にまみれたランプに灯を灯しました・・・。


そして薪を縛ってあるロープを1本引き抜くと、天井の真下に有る丸太にしっかりと結びつけました。


椅子の上に上って垂れ下がった縄に輪を作り、自分の首にその輪をかけました・・・。

“おとうさん、おかあさん・・・、僕は本当に悪い子でした。”

“貧しい家を助ける為にこうして働きに出たのに、賭博を覚えて全てのお金を失いました・・・。”

“お許しください・・・。”


少年はそう思い、手を合せました。 そのときです!

「お前は地獄に落ちるがいい!」


その声と共に、少年の背中が押されました。 少年は宙吊りになり、もがき苦しみました。


 


「おいヨゼフ! 何だってこうも、うなされているんだ!?」

「早く起きろ! 今日はお前が鞴(ふいご)の当番じゃないか!」


親方はそう言うと、少年を起こそうとして揺り動かしました。

「さあ! とっとと朝飯を食べて、急いでやっとくれ。 鉄が鈍って(なまって)しまう・・・。」


少年は目を開けました。 少年の目の前に居たのは、あの優しい親方だったのです・・・。

「よし、目が覚めたか! どうした! 何か悪い夢でも見ていたのかい・・・? 」


親方はそう言って、少年の頭を撫でました。 その手はいつも少年を撫でてくれる、温かく大きな手だったのです・・・。

「親方・・・。」


少年は涙を流しながら、親方に抱きつきました。 親方は言いました。

「悪い夢を見たんだね・・・! 誰だって、そりゃ悪い夢を見ることだってあるもんだ!」

「でも、世間に出てから悪い夢を見ちゃいけないよ! 真面目に働けば、怖いものなんて何も有りゃしないのさ・・・。」


そう言って、親方は微笑みました。 少年は今までのことが全て夢の中のことだったと知り、胸を撫で下ろしました。


こうして今日も、仕事場に蹄鉄を打つ威勢の良い音が鳴り響きました。 いつまでも眺めているわけにもいかず、私もそこを立ち去ることにしました・・・。



少年がこの国一番の鍛冶屋職人になったと聞いたのは、私が7年後に再びその国を訪れ、しばらくたってからのことです。


私は少年に翼を与えてやることは出来ませんでした・・・。 でも、もっと大切なことを教えてやることが出来たのです。


 〜完〜

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

最終話は、桜パパさんのお考えに沿って、私が書かせていただきました。


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『砂上の街』 連載のご挨拶

タカビーです。


大阪でギャンブル依存症の回復・克服支援をしているFPです。


〜初めてのあなた、どうぞよろしくお願いいたします。〜


ここでは、ストーリーを通じてギャンブル依存症の怖さを知り、依存症を回復・克服するお手伝いをしょうと思い、私の作品を公開しています。


〜今回、第二作の『砂上の街』の連載をスタートしましたので、お知らせいたします。〜


前回の『朝の告白』はロシアが舞台でしたが、今回は昭和から平成にかけての大阪が舞台です。


主人公の斉藤亮太が生活の糧をパチンコに求め、やがて堕落してゆく様を描いています。


このストーリーを通じて、あなたにパチンコ界の裏とその恐ろしさ、そして・・・、ギャンブルすることがいかに不合理なことか、知っていただけたらと思います。


不定期で連載しますので、どうぞよろしくお願いします。


〜それでは、次のページよりお読みくださいませ。〜

(完結後整理しますが、連載中は最新記事が新しい連載となります。)


このストーリーが、あなたとあなたのかけがえの無い方のお役に立ちますように・・・。

『砂上の街』 第17話 断鎖その2

『砂上の街』 第17話 断鎖


〜今までのあらすじ〜



またまた、間が空いちまったな・・・。 でも、まあ聞いてくれよ。


MBVDEG俺はユウコのヒモとして暮らしながらも、何とかパチンコ一本で稼ぐ為の第一歩を踏み出した。


いろいろと失敗もあったけれど、一日に2台の機械を終了せることにも成功した。 しかしながら、こういった稼業にもしきたりが有るという事もよくわかった。


俺がネグラにしている店のプロから呼び出され、終了せるのは一日に1台限りにしろと言われたんだ。


そんな折、俺の腹違いになる妹の繭子が実家に来たと連絡が入り、一方的なオフクロの物言いに俺はまた傷ついた・・・。


ユウコとの生活にも少し、変化が出てきている。 あらゆる面で俺に世話を焼きたがるユウコにも、やはり辛い過去があったんだ・・・。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


それから俺はオフクロに電話を入れた。 実家に帰る段取りを決める為だった。

「もしもし、母さん・・・。 日曜日には必ず帰るようにするよ・・・。」


「リュウ! 最近、あなたアパートにいないじゃないの。 毎晩どこに居るのよ・・・?」


「バイトとかあるしさぁ・・・、そりゃ遅くもなるよ。」


「深夜に電話しても居ないじゃない! 一体、どんなアルバイトしてるの!? 家庭教師じゃなかったの・・・・?」


オフクロは、まくし立てるように喋り続けた。 俺はずっと曖昧に相槌を打つことしか出来なかった・・・。

「とにかく、来週の日曜日には必ず帰ってくるのよ! わかったわね! 親戚の人たちがみんな来るんだから・・・。」

「あなたがちゃんとしていないと、みんなが恥をかくんだから・・・・。」


そう言ってオフクロは電話を切った。 俺はとてつもなく憂鬱な気分になった。

“そのうちに、オフクロとオヤジが抜き打ちでここまで来るかもしれない・・・。”


それにしても・・・、安易に電話を取り付けたのは大失敗だった。 コイツが有る限り、俺はずっと家から監視されているのも同然だ!


俺はそう考えた。 そして怪しがられない為にも、どうあっても次の日曜には帰らなければならないと、心に決めていた・・・。でないとヤバいことになる・・・。


ピンサロで働くユウコと同棲しているなどと知ったら、オフクロは何をするかわかったもんじゃない。


〜あの人は、そういった人なんだ・・・。〜


 


俺は急いでホールへと向かった。 既に扉は開かれ、軍艦マーチが鳴っている。 


俺はかろうじて、前日の据え置きを一台見つけ、その台にタバコを置いた。 やれやれと思った・・・。


それから俺は師匠の元へ行って挨拶をすると、今日確保した機械について報告した。

「おはようございます。」


師匠は少し不機嫌な口調で言った。

「駆け出しの割には、堂々と朝遅れて来るやないか・・・。」


「すみません・・・。」


「で、何番を押さえた?」


「はい、昨日の据え置きだった17番です。」


「17番か・・・。 そいつは一日仕事になるぞ、覚悟しとけ!」


師匠はそういったまま、黙って打ち始めた。 俺は少し疑問に思いながらも、その場を立ち去った・・・。


17番台は、師匠のいったとおりなかなか吹かない機械だった。 俺はかなり苦労した。 とにかくスランプが大きく、1回のスランプで800個くらい打ち込むこともあった。


何度ものスランプを経て、俺が終了ランプを点灯させたのは、何と午後4時を回っていた・・・。


俺はヘトヘトになりながら文鎮を交換し終わると、師匠の元へと向かった。

「どうや! 手ごわかったやろ・・・?」


「はい、かなり苦労しました。 でも西田さんは、苦労する機械だと最初から知ってたんですか?」


「あの機械は、打ち手を見よるんや・・・。」

「今のお前の実力なら抜けただけまだ幸せやと、そう思うことや!」


「どういうことなんですか? 」


「実力の有るものが打てば、あっさりと抜ける。 でもヘタクソが打てば、時間もかかるし場合によっては終了らん・・・。」

「このあたりが、我々と素人との違いや。 お前の打ち方はまだまだ未熟や、でもまあ今はそれでエエ。」

「徐々に上達していくもんやからな・・・。」

「ようは、100発打って何発ワクを抜けるかということや。 三共の機械は特にそういった特徴がある・・。」


〜その時、師匠の打っている台の右のチューリップが開いた。〜


師匠は少しうつむいてハンドルの下を人差し指で支えながら、すばやく2〜3発打った・・・。


打ち出された玉は、見事に右のチューリップに2個同時に飛び込んだ。 そして、それを3回連続で成功させた・・・。


〜俺は驚きで言葉が出なかった・・・。〜


「最高で、6回続けさせたことが有る。 勿論、それだけで下詰まりまでなったがな・・・。」


〜そして師匠は俺の目を見ながらこう言った。〜


「エエか? 遊びでやっているんやない。 仕事やと割り切れ。 甘い考えやと喰ってはいけんで・・・。」


その日、俺はまた一つのことを学んだ。 一番の基本は台を見る能力だが、決してそれだけで喰っていけるとは限らない。


やはり打ち手も腕を磨かなければならないのだ。 打てる台の範囲を広くする為にも、プロは技術を磨く必要が有る・・・。


その日、俺は一台終了させただけでホールを後にした。 それでも1万円と少しの勝ち・・・、ありがたかった。


 


俺は最近ユウコと居るときに、なぜか安らげなくなっていることを感じ始めていた。


こうやって、ユウコの部屋に来て自分のパジャマに着替え、寝間にもぐりこむ時も、なぜか満たされなくなってきているのだ・・・。


今の生活に不満があるわけではない。 俺が生活する金は、今もってユウコが全て負担している。 そういった意味では、これほど気楽な立場は無いし、何だって自由気ままにさせてもらっている。


WEEEBGHUでも、いつまでこんな生活なのだろう? 俺はこんな生活を一体いつまで続けるのだろうと考えると、かなり気が重くなってくる。


そう! この頃、俺は自分が籠の鳥になっているような気さえしていたんだ。


俺は隣で静かな寝息を立てているユウコの寝顔を、そっと覗き込んだ・・・。


“この子は、一体何を考えているのだろう・・・?”


毎日求め合い、愛し合い、そして満たされて眠る・・・。 そんな生活を続けているにもかかわらず、俺はユウコの考えていることが実のところ、さっぱりわからなかったんだ。


〜この頃からだ・・・。〜 


そろそろ俺もいろいろな鎖を断ち切って生きようかと思い始めたのは、ちょうどこの頃だったんだ・・・。


“フォーミータイト、大阪ベィブルース・・・。”


今日一台終了させる間に何度も聞いた、上田正樹の『哀しい色やね』がずっと耳に残っていた・・・。


 〜続く〜


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『砂上の街』 第16話 断鎖

『砂上の街』 第16話 鎖


LKHT勝ったやて!?


冗談もほどほどにせい。


ワシらは勝たせてはおらん。


客に預けただけや・・・。



大阪市内 某ホールの釘氏Kの言葉



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


その夜、ユウコが帰宅したのはいつもより少し遅い1時過ぎだった。 俺は少し苛立っていた・・・。


「リュウ、お待たせ・・・。 ねぇ、奢るって一体どないしたん・・・?」


帰って来るなりユウコは不安そうな顔で尋ねた。 俺は、今日2台の機械を終了らせたいきさつを話し、最後にこう付け加えた。

「いつも世話になってるからさぁ、今日くらいユウコにご馳走しようと思って待ってたんだよ。」

「今日は、ラーメンじゃなくて焼き肉屋にでも行こうよ! 夜通しやってる店、ほら!日本橋にあったよね・・・。」


「うん! じゃあ、行こ! 焼肉なんて久しぶりやね・・・。」

ユウコはそう言って、着替えないままでコートを羽織った。 笑ってはいるものの少し浮かない顔をしている。 俺は少し不安なまま彼女の肩を抱き、歩き始めた・・・。


焼肉店は深夜にもかかわらず、そこそこの客で込み合っていた。 俺とユウコは店の奥の小さなテーブルに座り、ビールで乾杯した。


待ちくたびれた空腹と喉の渇きで、一気に俺はビールを飲み干した。 格別に旨いビールだった。 勝負に勝ち、その勝った金で付き合っている女と、こうして焼肉をつまんでビールを飲む・・・。


少し自分が大人になった気分だった。 とにかく、今日俺は自分で稼いだ金でこうやってユウコと食事しているんだ・・・。


“明日からは、もうユウコの世話にならなくていい・・・。” そう思えたことで、とても気楽になった。 なにしろ俺は生活費やその他のお金も、全部ユウコに頼りきっていたからだ。


何ともいえない充実感があった。 俺たちはそうやって、ひと時の幸せに浸っていた、いや!そうじゃない・・・。 


〜そう思ってたのは俺の独りよがりだったんだ・・・。〜


食事がすむと、俺は支払いを済ませようと伝票を探した。 そこに伝票が無かったので、仕方無しにレジに向かい支払いを済ませようとした。

「おいくらですか?」


「もう先に頂戴しています・・・。」


「えっ! ウソだろ!? 誰が支払ったの・・・・?」


「お連れ様の女性が先ほど・・・。」


俺が途中で手洗いに立った隙に、ユウコが支払ったのだろう。 俺は驚き、先に外に出ているユウコに尋ねた・・・。

「ねえ、ここの勘定、ユウコが払ったの・・・? どうして!?」


YUKO3ユウコは申し訳なさそうに、コックリとうなづくと、ゆっくりと歩き始めた・・・。


俺は、どうしょうも無いくらい腹が立った。 とてつもない屈辱を受けたような気がしたからだ。


確かに俺は学生でユウコはああいったいかがわしい店ではあるが、ちゃんと働いている社会人だ。


だからといって、いつまでも半人前扱いされていたんじゃ、こちらもたまらない・・・。


俺はその場で、ユウコにその思いをぶつけたかった。 でも、そのままユウコのアパートまで歩き続けた。


寄り添って歩いていても、その時なぜかユウコが遠く感じられたからだ・・・。


ユウコと俺は、肩を抱き合って暗い夜道を歩き続けた。 ユウコのアパートの前に着いた時に、カギを回すユウコの姿が一層小さく見えた・・・。


 ◇


「ねえ、リュウ・・・。 アタシが前にリュウに言ったこと覚えとる? 生活費はアタシが出すって、言うたやんか。」

最初に沈黙を破ったのは、ユウコだった・・・。


「ああ、覚えているよ。」

俺はユウコの飼い犬のチーの頭を撫でてやりながら、そう答えた。


ユウコが少しきつい口調で、話しかけた。 いつもどんなことがあっても俺には逆らわないユウコが、そんな喋り方をするのを俺は初めて聞いた・・・。

「お願いやから、ちゃんと学校に行って! 昼間からパチンコなんか行かんといて・・・。」


「でもさ、ちゃんと勝てるんだよ。 それも、行き当たりばったりじゃない。」

「釘を見て、前日との違いを読んで、ちゃんとプロとして、真面目に稼いでるんだよ・・・。」

「それにさ! ちゃんと教えてもらってるんだよ。 その人のおかげで上達して、今日やっと儲かったのさ・・・。」


ユウコは、俺の話をずっと下を向いたままで、噛みしめるように聞いていた。 そして、俺の目を上目遣いで見ながら遠慮がちに話し始めた・・・。

「アタシのおとうちゃんは、夜逃げしたんよ・・・。」

「アタシと妹とおかあちゃんを残して、どっか行ってしもた。」

「もとから、あんまり働かん人やった。 昼間はマージャンかパチンコばっかしてた。 夜になったら、ヨソで作った女の処に行ってたわ・・・。」


俺はユウコに反論した。 自分のしていることに微塵ほどの罪悪感も感じてはいなかったからだ・・・。

「ねえ、ユウコ・・・。 俺はさ、遊びでパチンコしてるわけじゃない。 ちゃんと働いているんだよ、その証拠にこのとおり打つ台を決めて、勝った収支を手帳に書き留めている。」

「俺の師匠は、パチンコだけで生活しているんだ。 勝ったお金を貯金し、家に仕送りまでしている・・・。」

「そういった人に教えてもらって、頑張っているんだ。 わかってくれないか・・・? 」


俺がそこまで話しても、ユウコは暗い顔のままだった。 ユウコが言った。

「アタシのおかあちゃんは、お父ちゃんにいつも言うてた。 パチンコなんか全然お金にならへん、あんた、まともに働いてって・・・。」

「でもいつだって、おとうちゃんはこう言って出て行ったわ。 なあに、勝とうと思えばいつだって勝てるんや! パチンコでお前ら養うことぐらい、そのうちにやってみせたる。」

「そう言うて家を出て、いつもションボリして帰ってきた。 そんなおとうちゃんに、おかあちゃんはいつも、これで最後よと言うて、千円札を差し出すの・・・。」

「そしてたまに勝った日だけ、いろいろとお土産を持って帰ってきたわ。 このとおり勝とうと思うたら、わけないんやて言うて・・・。」

「そのうちに、呑みに行った先の女と知り合って、お父ちゃんは家の有り金を全部かき集め、それを掴んで飛び出した。」

「それっきり、帰っては来えへんねんよ・・・。」


ユウコはそこまで言うとうなだれた。 俺はユウコの肩をそっと抱いた・・・。

「ねえユウコ・・・、信じてくれないか? 俺はユウコのお父さんとは違う、本当に真面目にプロとしてパチンコをしているんだ。」

「ちゃんと稼げれば、月に20万以上は稼げるだろう。 そうすれば、ユウコだってもうあそこに勤める必要もなくなるじゃないか・・。」

「そうして、俺のアパートで一緒に暮らそうよ。 きっとあそこの方が、暮らしやすいしさ・・・。」


ユウコの頬に一筋の涙が流れた。 ユウコがつぶやいた・・・。

「リュウ、嬉しい・・・! でも、無理はせんといて。」

「リュウは、アタシと違う・・・。 ちゃんとした偉い大学の学生なんよ。 ちゃんと勉強して、立派な人になって欲しいもん・・・。」


「勉強の方は大丈夫さ、もう単位もかなり取ったし心配しなくてもいい・・・。」

「ボクは、ユウコにいつまでもあんなところで働いていて欲しくない。 だからこそ、頑張っているんだ!」


そう言って俺はユウコの唇に自分の唇を押し当てた。 抱きしめたユウコの体は冷たく、少し震えていた・・・。


 ◇


朝になり、俺は学校の掲示板を一通り見てまわると、大急ぎで自分のアパートに戻った。 思ったとおりだった。


郵便受けに配達不在票が入っている。 俺は郵便局で書留の封書を手渡してもらうと、それを手荒く破り、中身の便箋に目を凝らした・・・。


>リユウ


>最近、夜に電話がつながらないわ。
>何をしているのかしら・・・。


>お父さんも気にかけているわ。
>少しは心配する身にもなってみたらどうなの?


>繭子さんが家に来て、やっと落ち着いたので
>至急帰ってきてくれないかしら・・・。


>おじいちゃんの法事が今週の日曜にあるから
>それまでには必ず帰ってくるのよ。


>当面のお金として、5万円入れておくわ。
>ちゃんと帰ってきて・・・。


>お願いだから、お父さんと
>母さんに恥をかかせないでちょうだい。


俺はその便箋を破り捨てた。 腹が立った、悔しかった。


俺に何の相談も無く勝手にいろいろと決めたくせに、そのことをオフクロは何とも思っていない。 そして、いつものことだが、「恥をかかせないで!」というわけだ・・・。


考えれば、俺は今までにオフクロのこの「恥をかかせないで!」という言葉に何度苦しめられたことだろう・・・。


小学校の頃から、受験してこうして大阪に来るまでに、絶えず聞かされてきた言葉だ。


「あなたの従兄弟のマサルちゃんは、もう第一志望に合格したらしいわよ! 来年はあなたの番なのよ、恥をかかせないで頂戴ね!」


こういった具合にいつだって誰かと比較され、ちゃんと結果を出すことを要求され続けてきた。 いつだってそうだったんだ・・・。


俺はこうして、有名大学といわれる学校に入学してはいるものの、その為に今までどれ程の楽しみを我慢し、母さん!あなたのメンツの為に尽してきたことだろう・・・?


大学に入学しても、そこはテストの答案さえロクに見ない教師ばっかりで、適当に卒業して有名企業に就職する為に学生皆がプラプラしている、何の役にも立たない世界だ。


俺はこういったことを考えながら、先日電話をかけてきた繭子のことをふと思い出していた。


“しっかりした子だった・・・。”


きっとあの子ならオフクロにも好かれ、これからもあの家でうまくやっていくに違いない・・・。


そう思うと一層寂しさが込みあげてきた。 薄汚れた暗い部屋に置かれたパチンコ台にもたれ、俺はしばらく涙を流し続けた・・・。


 〜続く〜
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