シロウトは出ることを願って打つ我々は出ることを知ってから打つ
現役パチプロK氏のことば
西田さんは続けた。
「エエか? 我々プロは、遊びでやっているのと違うのや! 穴を開けると、必ずロクでもない連中が来る・・・。」
「プロは出来る限り、休んではならん。 これからネグラは、大切にすることやな・・・。 稼ぐ限りよく覚えておけ。」
俺は自分の甘さを痛感していた。 唇を噛みしめた。
“甘かった! 少し勝てるようになったと思って、いい気になっていた。 俺はぬるま湯に浸かっていたんだ・・・。”
そう思った。 たいした理由もなく店に顔を出さないことが、どんなに大きなリスクであるかもよくわかった。 最後に西田さんが言った、「これからネグラは、大切にすることやな・・・。」という言葉が重くのしかかった・・・。
“確かにそうだ。 好きな時に行って、好きなだけ抜いて帰れるという稼業じゃない。 稼ぐ為にはそれなりの覚悟と技術、そして毎日の下見が必要だ・・・。”
そして、「場」こそが最も大切なものだと初めて気付いた。 俺は「場」の有り難みと大切さに気付いていなかった。
そのせいで、今回西田さんにまで迷惑をかける結果となってしまった・・・。
俺は西田さんに低調に詫びると、部屋を出てユウコのアパートへと向かった・・・。 歩き続けながら、ふとユウコのことを考えた。
“ユウコは今頃、どうしているのだろう・・・?”
考えて見れば、ユウコは可哀想な身の上だ。 それに比べ、俺は恵まれすぎている。 今はいろいろなことが有って実家に帰ることも億劫になっているが、今まで何一つ不自由したことがない・・・。
ユウコの父親は家を捨てて出て行ったという・・・。 俺は実の親ではないにせよ、ちゃんと真面目に働き面倒を見てくれ、仕送りまでしてくれる親が居る。
“それでも・・・。”
俺はふと考えた。 なぜに俺は、こうも家に帰るのが嫌なのだろう? どうして、家を受け入れることができないのだろう・・・?
“オフクロとオヤジが、俺の気持ちを全く考えず行動するからだ!”
“なんだ! その程度で親かい! そこまで出来れば親っていうわけなんだな・・・。 こんなことぐらいなら、俺だっていつでもできる。 あんたら、何をそんな大袈裟に考えてるんだ?”
そう考えてみた。 でも一連のことを、繭子のせいにはしたくなかった。 考えて見れば繭子だって、可哀想な身の上だ。 あの子の母親は、いつ亡くなってもおかしくない状態だと聞いている。 このことを考えて俺は心が痛んだ・・・。“俺と繭子の境遇は似通っている。 でも、俺の方が遥かに子供だ。 そうだ! 俺は今までうまくやってきたように見えたけど、きっと大人に成りきれていないんだ・・・!”
〜そんなことを考えながら、俺は歩き続けた。〜
◇
ユウコのアパートに着くと、やはり郵便受けには賃貸のチラシが無造作に投げ込まれたままになっていた・・・。
ユウコが何の連絡も無く留守にしているのは、きっと実家で何かあったに違いない。 でも、それにしては気になることがある・・・。
それはユウコが書き置きすら残さずに、留守にしているということだ。 このことが気にかかった。 ユウコはきっちりとしているから、今までにそんなことは無かったからだ。
俺は歯を磨くと自分の布団だけを敷き、ゴロリと横になった。 ふと、自分の部屋に置かれたパチンコ台のことが気になった。
“ここに持ってくるのも問題だ・・・。”
いろいろと考えて俺が出した結論は、友達の誰かにくれてやるということだった。 幸い、まだ月末までには10日ばかりある。 それまでの間にアパートを空け、どこか次の住処に落ち着けばよいからだ・・・。
今回実家に帰らなかったということで、ユウコとあのアパートで一緒に暮らすということはできなくなってしまった。 いつ何時、オフクロやオヤジが立ち寄るかもしれないからだ・・・。 そんなことをして、ユウコと同棲していることが知れようものなら、また話がややこしくなる・・・。
俺はそんなことを考えながら、いつしか眠りに落ちた。 この年の大阪はいつになく冬の訪れが早く、厳しい寒さだったことを今想い出す・・・。
〜続く〜
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